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【後編】いざ頂点へ。元プロコーチと、顧問が目指す「優勝」への道しるべ。~クラーク高校純情物語~

eスポーツのアイコン的存在である「e Sports Studio Akiba」。2019年に「eスポーツ専攻」を開講した「クラーク記念国際高等学校 秋葉原ITキャンパス」で指揮を執るのが、今回紹介する顧問の笹原先生。そして、プロゲーミングチーム「Rascal Jester(ラスカルジェスター)」に所属し数々のLoLリーグで活躍、引退後にクラーク高校に合流したのがSesamiコーチとYukiコーチ。

年末に開催される「第2回 全国高校eスポーツ選手権」LoL部門決勝大会に出場する同校☆今回は、そんな同校eスポーツ専攻を支えるいわば最強布陣を構える、この”裏側”の3人に密着取材、インタビューした模様をお届けします…!!(取材日 2019.12.4)

コーチ陣が所属していたプロチーム「Rascal Jester(ラスカルジェスター)」はLoLの国内リーグ「LJL」にも出場しています。LoL界隈では知名度抜群な2人が同校コーチとして就任するというウルトラCがここに実現したんです☆

■ 策士 笹原先生が語る競争術

今年開講したeスポーツ専攻には20名以上もの生徒が在籍する。通常LoLのチームは5名で構成されるが、同校ではたった2チーム…。この辺りの狙いや理由とは!?

「数多くチームを出してしまうことで、努力しなくても試合に出れると思われたくないんです。やはりスポーツなので、スタメンがあって枠が決まっていて、そこに対して努力してスタメンを掴み取って行こうという意図もあって。

コーチの先生方がチームのバランスを均等に分けました。2チームを戦わせて、何回も入れ替えて戦わせて…相性や相乗効果を見ながら一番良いチームを選ぶ形で選考を行ったんです。」

■ 「勝つための技術」「eスポーツの経験を人生に活かす」2つの指導

2人のコーチについて聞いてみた。ここでも興味深い笹原先生の分析眼が語られた。

「どちらかというとSesamiさんは厳しいタイプ。技術だけじゃなくて生活面にも注意を払ってくれています。Yukiさんは戦術面などの技術を中心に”勝つために”というところが色濃く出ている。キャラクター選択ひとつとっても、『勝つためのピックはこうだ』と教えてくれているんですね。」

「LoLというゲームで勝つための手段をYukiさんが教えてくれて、Sesamiさんはそれをどう今後に生かしていくか、eスポーツとして彼らに何か残してあげたいとか。そういった違いを感じます。」

写真からも伝わると思いますが、先生、コーチ、そして生徒たちの距離感が程よく近く、決して近すぎず生徒たちには先生たちへのリスペクトもある。ゲームのミスがあった際にコーチが生徒を怒る場面があるそうですが、笹原先生はこう語ります。

「それこそ怒られる経験って、生徒たちは普段ほとんどないんですよね。彼らは悪いことをしたわけではなく、ゲームでミスしただけで怒られるんです。私達と生徒の仲が良い分、成立しているんです。だから凄く良いメリハリが付けられていると思います。」

■ チーム名の由来はプロチーム時代のYouTubeコンテンツ

笹原先生もファンと公言する、プロゲーミングチーム「Rascal Jester」に所属していた両コーチに話を聞いてみた。前編から気になってるチーム名「Yuki飯食べ隊」の由来とは!?

「選手を引退後Sesamiさんと一緒にチームのマネージャーになりまして、その時ゲーミングハウスのメンバー達にご飯を作っていたんですよ。それをコンテンツにするのは面白いんじゃないかな~という感じで”Yuki飯”っていう動画シリーズがあったんです。

ゆるい感じでやってましたね。ガッツリした企画よりも日常的にこんな感じですよ、というのを見せたかったんですよね。それがまあ…名前として覚えやすかったのかなと思います。」

■ 生徒たちとは今では何でも言える間柄に

就任当時はそれは大変な思いをしたというSesamiコーチ。10代の生徒たちとの距離感をつかむのに必死に努力したそうです。

「正直、最初講師のお話を頂いた時に迷ったんですけれども、何か自分で挑戦できることをしたいと思っていたんですね。eスポーツという世界自体がチャレンジだと思っているので…。ですが最初は本当に辛くて(笑)。話を聞いてくれないし、興味を持ってくれないし(笑)。

一番しんどかったのが、自分と生徒の距離を埋めること。結構色々試行錯誤してみて、普段一緒にゲームしてみるとか、あとは僕の精神年齢が幼いのかも知れないですけど、高校生と同じ目線でふざけてみたり。そういう努力の末、すごく距離感が近づいて…(笑)。今では、僕は何でも言える関係だと思ってます。」

「僕は後から入った分、先にSesamiさんがベースを作ってくれていたので。最初は僕も大変だったんですけど、今はだいぶ形になってきたかなと思います。」

■ もし今高校生に戻れたらeスポーツ部に入る!?

プロとして活躍し実績を残した2人に「高校生に戻ったらeスポーツ部に入る!?」なんて質問をしてみた。

「もちろんです!ぜったい楽しいと思いますね(笑)。」

「僕もそうですね。クラークさんの様に部室ですとか、ソフマップさんのスタジオなどの素晴らしい環境があって、なおかつプロゲーマーの講師がいるという環境でやってみたかったですね(笑)。」

■ あの舞台に生徒たちを連れて行く

コーチ陣のお話を聞いていると、自分たちが出来なかったこと、もっとこうすれば良かったと思っていること。そんなことを生徒たちに投影し教えているような、そんな感覚を覚えました。それはこの後も言葉でも語られます。指導者が指導者たるモチベーションを保つ理由とは。

「きっかけになった出来事がありまして。第1回高校生選手権、ちょうど1年前ですね。大会に出場して僕らすぐに負けちゃったんですけども。その決勝戦を見に行こうと、僕と生徒4人とプロゲーマーの友だちを連れて一緒に見に行ったんです。

その決勝の舞台を見た時に、僕は当事者ではないんですけど凄く鳥肌が立って。お金も掛けていてあの舞台に生徒たちを立たせてあげたいなって思ったんです。多分生徒たちも同じように感じていたと思うんですよ、僕が思うぐらいですから…。実際試合に出ていた彼らは、きっと僕の何倍もあそこに立ちたいと思ったはずなので。彼らを来年、再来年、絶対に行かせてあげたいなって。それがきっかけであり、僕自身のモチベーションになっています。」

「何かを上手くなりたい時って、楽しい事以外にもつまらない事や嫌なところもいっぱいあるじゃないですか。それを、プロとして経験した事を織り交ぜてなるべく理解しやすく吸収しやすいように教えることは意識しています。」

「勝ち負けももちろん大事なんですけど、そこに向かって『どれだけ努力できたか』『本気でやったか』。その気持ちを込めてやった時に得られる何かというのを経験してほしい。」

クラーク高校eスポーツ専攻の目標として、プロを育てる場所、プロゲーマーになろうという学校ではないと言う。eスポーツを通じて何かを学んでほしいと。まだ今年から始まったeスポーツ専攻の形として完璧ではないけども、やはり意識の高い子たちにイイ環境を与えてあげたいと…。そんな事を語ってくれました。

■ 最後に…。

――ちなみに…優勝できたらYuki飯をみんなにふるまうというご褒美なんかはあるんでしょうか…(笑)。

「そうですね…優勝したら(笑)!(eスポーツ)専攻全員だと人数が多いので(笑)。」

「じゃあ新居でやろうか、招待して(笑)。」

「動画の企画になるか(笑)。」

「わはは!」

――選手のみなさんも一緒にお話を聞いていて、一層気が引き締まった顔というか、先生たちの期待に応えたいという表情してますね。

「もう優勝しか見てないですね。生徒達とも話していたんですけれども、もう2位も4位も一緒だと。優勝しようと。」

――決勝大会が俄然楽しみになりました(笑)。本日はありがとうございました!

◇Sesamiコーチ
ゲーミングチームQuintetTonix(QTX)にて2015年~2018年に選手として活動し、ロジクールカップを始めとした数々の大会で上位の実績を重ねる。Rascal Jesterにて2年間主にマネージャー兼通訳として活動し、2019年12月に退団。

◇Yukiコーチ
プロゲーミングチームRascal Jester(ラスカルジェスター)にて2016年から3年間選手として活動。LJL(リーグ・オブ・レジェンドの日本公式リーグ)各シーズンで実績を残す。その後同チームのマネージャー兼通訳として携わり、2019年12月に退団。

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