『第4回全国高校eスポーツ選手権 リーグ・オブ・レジェンド部門 『N1』vs『Yuki飯食べ隊』世紀の対決の全貌!

『第4回全国高校eスポーツ選手権』で、業界に衝撃が走りました。同大会と『STAGE:0』を連破していたN高等学校『N1』がついに敗れたのです!高校eスポーツの歴史は『N1』の歴史ともいえるほどこれまで『N1』の一強時代がずっと続いていましたが、ついに終止符が打たれ新しい時代の幕開けとなるのでしょうか。

今回はゲーマーゲーマーが『N1』と優勝を果たしたクラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara『Yuki飯食べ隊』の試合を独自分析!『N1』、『Yuki飯』それぞれの強さとは何か、そして試合中何が起きたのかを編集部が独自に検証します。

〇そもそも『N1』はなぜ強い?

◇輝かしい実績の数々

連覇、そして多数プロ選手を輩出する『N1』は、これまでゲーマーゲーマーが何度も取り上げたように、高校eスポーツ大会で王者として君臨し続けてきたチーム。その実績は『STAGE:0』では2019、2020、2021に開催された大会の全てで優勝しており、『全国高校eスポーツ選手権』では第1回はBEST 4 、第2回、第3回では優勝の成績を収めています。卒業したほとんどの選手が今までの『STAGE:0』や『全国高校eスポーツ選手権』にて優勝を収めているのです。
それほどまでに連覇し、王者として君臨してきたのが『N1』なのです。

さらに過去には『N1』からは多数のプロ選手が輩出されています。

―過去輩出されたプロ選手・プロチームに所属していたことがある選手―
▼Detnation ForcusMe アカデミー
Marimo選手
vann選手
rre選手
▼Sengoku Gaming アカデミー
NaiNa選手
Acciy選手
yunocy選手
▼Crest Gaming Act アカデミー
Primo選手
momo tqt選手
▼Rascal Jester アカデミー
Shakespeare選手
(以上は2021年の大会情報を元にしたものです)

『N1』は2021年の3月に所属していた5人の選手が卒業し、今年度から新チームとして生まれ変わることに。チーム名も 『KDG N1』から『N1』に変更となりました。

◇ネットの高校

N高はインターネットと通信制高校の制度を活用した新しい高校で、好きなときに、好きな場所で学習することができます。ICTツールを活用し効率よく高校卒業資格取得のための学習ができます。加えて生徒数が多いこともあり、LoLをプレイしている、または知っている生徒が多く在籍しています。

◇2人のコーチによる指導


N高のeスポーツ部のLoL部門では2人のコーチによる指導が行われています。

1人目はRascal Jesterでプロ選手として活動しており、現在も公式大会の実況や様々な分野で活躍しているLillebeltコーチ。2人目は公式実況の場や他のさまざまなゲームで広く活躍しており、N高では初心者育成にも力を入れてくれている和葉コーチ。この2人のコーチング・指導を主軸に練習をしているため、かなり練習の質が高いといえるでしょう。

練習方法としては、週に1度チームで集まり、他校や他のチームと練習試合をし、試合後にLillebeltコーチにフィードバックしてもらう形を取っているとのこと。

〇『Yuki飯食べ隊』はなぜ強くなった?

◇永遠の2位からの脱却を果たした『Yuki飯食べ隊』


『Yuki飯食べ隊』もこれまでゲーマーゲーマーで何度も取り上げたように、『N1』と並ぶ高校eスポーツ界の強豪チームです。しかしこれまでの大会では決勝で何度も『N1』に敗北しており、2位という成績が多かったのです。

そんな『Yuki飯食べ隊』からも日本のLoL界で活躍する選手を今までに輩出しています。

―過去輩出された強豪選手―
▼Crest Gaming Act アカデミー
Funahwi選手
▼LJL SGG 2021 TEAM Ocean
Galaxy選手
▼LJL SGG 2021 TEAM Cloud
ponkotu選手
(以上は2021年の大会情報を元にしたものです)

◇eスポーツ専攻の設立

クラーク記念国際高校では、2018年にeスポーツ専攻が設立されました。そして、選手として活躍したい生徒が多く入ってきたことが、選手層が厚くなってきた要因だったのだと思われます。さらに2021年にはeスポーツアリーナを併設した「CLARK NEXT Tokyo」を設立していることからも、eスポーツにかなり力を入れているのが分かりますね。

◇昨年度から大会に出場している選手の成長

今回の大会での『Yuki飯食べ隊』のチーム内の平均ランクは『N1』に匹敵しており、やはりランクという部分で見ても『Yuki飯食べ隊』の成長というのは計り知れません。

昨年のランクからの推移を見ても、MIDのNanabito選手はプラチナからマスター、Toriyaki選手もゴールドからプラチナ、SUPのGalaxy選手もプラチナからマスターまで成長しています。(別アカウントなどのレートは除く)

◇『Sesa飯食べ隊』の存在

クラーク記念国際高校には『Yuki飯食べ隊』ともう一つのLoLチーム『Sesa飯食べ隊』があります。『Yuki飯食べ隊』を1軍とするならば、『Sesa飯食べ隊』は2軍に当たる立ち位置といえるでしょう。『Yuki飯食べ隊』と学園内での練習試合などをしてお互いに切磋琢磨しているということからも、チームワークや競争心という部分で成長に繋がっているのかもしれません。

◇コーチの存在


『Yuki飯食べ隊』にはYukiコーチという、Rascal Jesterのプロ選手として活躍していたコーチがついています。先ほど『N1』のコーチで紹介したLillebeltコーチと同じチームで活躍しており、その点においても『N1』と『Yuki飯食べ隊』はライバル関係といえるかもしれませんね。

そして『Sesa飯食べ隊』にはsesamiコーチがついています。、sesamiコーチもまたRascal Jesterのプロ選手として活躍しており、さまざまなアマチュア大会での優勝経験もあるコーチです。

強豪校にはコーチ層が厚いという共通点があるように見えますね。

◇Funahwi選手の存在

『Yuki飯食べ隊』といえば、多くの人の印象に残っているのが2021年3月に卒業したFunahwi選手でしょう。このFunahwi選手は過去に『N1』をあと一歩のところまで追い詰めた立役者であり、今はプロとして活躍しているという折り紙付きの選手。

『Yuki飯食べ隊』をここまで大きくしたのもFunahwi選手の活躍があってこそといっても過言ではありません。『Yuki飯食べ隊』のインタビューでも度々Funahwi選手の名前が出るほどで、練習などにも頻繁に顔を出してサポートしていたようです。

〇試合はどう動いた?『N1』、『Yuki飯食べ隊』のそれぞれの目論見

ここからはゲーマーゲーマー編集部が両雄が激突した試合を分析していきます。

◇BAN & PICKの詳細

まずはBAN&PICKに注目していきましょう。

まず『Yuki飯食べ隊』側のBANはグウェン、イレリア、サイラス。グウェンというチャンピオンはmomo tqt選手の警戒、イレリアとサイラスのBANはmomotqt選手、rre選手が得意で、フレックスピック(※)をされることを嫌ったのだと思われます

(※)フレックスピックとは、多数のレーンで使用できるチャンピオンをピックすること。使うレーンが確定できないので相手からすると厄介なピックといえる。

対して『N1』側は相手の得意なチャンピオンを素直に消していくBANとなりました。ピックは順当に進み、セカンドBANに。

セカンドBANでは『Yuki飯食べ隊』はアカリ、ブラッドミアのBAN。アカリもフレックスピックを嫌ったものでしょうか。ブラッドミアは予選決勝でmomo tqt選手がかなり活躍していたため、それを警戒したBANだと思われます。対して『N1』はヴェックス、シンドラのBAN。MIDの主導権を取りやすく、Nanabito選手が得意としているチャンピオンなので警戒をしてのBANでしょう。

そしていよいよピックの段階となり、最初にピックをするのは『N1』。使いこなせれば有利が大きいチャンピオンであるジェイスを選択。それに対して『Yuki飯食べ隊』は完全な予想外、これまで隠してきたチャンピオンを選択しました。それが4番目にPICKされているザイラです。このチャンピオンはプロや、チームゲームではほとんど使われることのないチャンピオンなのです。理由としては凄くダメージに特化したサポートチャンピオンで、攻められるのに極端に弱く非常にピーキーなチャンピオンだからです。

◇構成の紹介

『Yuki飯食べ隊』は、ジン、ザイラでBOT主導権を確立させ、MID、JGをBOTに寄せダイブなどのアクションから有利を作り、集団戦で勝つことを狙った構成のようです

一方『N1』は、ツイステッド・フェイトのアルティメットとリー・シンの序盤強い特性を活かし、ジェイスを助けTOPから勝っていきたいという狙いを感じる構成です。

お互いのチームはMID主導権が重要となるので、ここが注目ポイントとなる試合となりました

◇試合の展開とターニングポイント

まずは4:15、狙い通りBOTの主導権を確立させた『Yuki飯食べ隊』が、BOTでビックウェーブを作りタワー下に押し込みました。そのタイミングを狙っているのはSiroshi選手とNanabito選手。Nanabito選手のテレポートがらダイブを狙いますが、そこには『N1』のrre選手もテレポートを合わせダイブを回避します。これはN1としても読めていた行動だったようです。

しかしプランとしてやりたいことを押し付けることができているのは『Yuki飯食べ隊』だったように思えます。


7:35、TOPに写ったSiroshi選手を見てすぐにドラゴンを抑える判断をしたのは『N1』。しかし、ここで『Yuki飯食べ隊』のGalaxy選手がドラゴンのスティールに成功。これがこの試合での大きなターニングポイントの一つとなりました。

10:50、リフトヘラルドを獲得したSiroshi選手が勝たせたいレーンのBOTレーンに召喚をしようとします。ただそこを阻止したい『N1』から仕掛け開戦、ただ『Yuki飯食べ隊』の判断がとても速く、rre選手をフォーカスし、結果的に3:1のキルトレードとなり『Yuki飯食べ隊』がリードを広げる形となりました。

続けて12:45、ドラゴンを獲得した『Yuki飯食べ隊』に仕掛けるのは『N1』。しかし、ここでの仕掛けはかなり焦りが見えるように感じました。いつもの『N1』とは少し違う動きといってもいいかもしれません。結果的に『N1』は一方的に4キルを取られてしまい、これが2つ目のターニングポイントとなりました。

23:00、4つ目のドラゴンのタイミング、最初に『Yuki飯食べ隊』がドラゴンをスティールしたことがここで響いてきます。最初のスティールさえなければ『Yuk飯食べ隊』はまだ3つ目のドラゴンで、『N1』としては焦らずプレイできた状況だったかもしれません。結果的にはAcciy選手がキャッチされ、ドラゴンソウルだけでなくバロンまで取られてしまう事態に。

ここからは『Yuki飯食べ隊』は有利を活かし、『N1』はゴールドはなんとか食らいついていていましたが惜しくも敗北してしまいます。

―試合結果—
【試合時間】 29:09
【キル】 18:6
【ゴールド】 50.3k:46:1k

『Yuki飯食べ隊』が勝利

『N1』としては実力は十分にあった中、チームとして難しい構成をしてしまい、その分『Yuki飯食べ隊』が試合を進めやすかったように感じました。
また、チームワークの点で見ても『Yuki飯食べ隊』のチームとしての完成度が素晴らしかったです。

〇高校eスポーツに新時代到来か

絶対王者であった『N1』がついに敗れ、『Yuki飯食べ隊』は悲願の優勝を果たし、新たな時代の到来を感じさせる大会でした。

今大会決勝進出していたルネサンス大阪高等学校『ロイヤル決して諦めない』、アートカレッジ神戸『ACK A』も上位常連校ですが、まだ『N1』、『Yuki飯食べ隊』との差は大きく感じます。彼らが次の『Yuki飯食べ隊』のような存在になり、そして優勝を争う未来になることに期待したいですね。

とはいえ、高校eスポーツの歴史はまだ4年程度と決して長くないのも事実。これから練習や指導の方法が確立され広まっていくことで、新たな高校が強豪校として名を馳せることも十分にあり得ます。ますます目が離せなくなった高校eスポーツの今後に注目していきたいですね!

(画像引用元:第4回全国高校eスポーツ選手権リーグ・オブ・レジェンド部門決勝大会 https://youtu.be/DFtg7T8bmn4


試合の詳細はこちらの動画をチェック!

 

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