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《第4回》毛見誓也のコレで良いのか!? 日本のeスポーツ「eスポーツ部は作れる!!」【連載全6回】

◆ 毛見誓也
洋ゲー、映画、自販機巡りが好きな高校生ゲームライター。ゲームを仕事にしたくてゲームクリエイターを目指すも、プログラミングと3DCGを学校で学びつつ同級生とのレベル差に悩み挫折を味わう。そんななかゲームライターという仕事を知り、海外ゲームのレビューや攻略ブログの運営をスタート。より多くの人に「面白い!!」と思ってもらえるような記事執筆を目指し日々邁進中。
◇洋ゲーのレビューや攻略、ニュースなどを紹介/げーむのはらわた

「毛見誓也です。趣味はゲームです!!」

こんな風にクラスの自己紹介で言えたらなぁと高校卒業間近の今になっても思います。高校入学当初、僕は自己紹介でなんて言ったかというと「毛見誓也です。趣味は読書と映画鑑賞です……。」でした。

多少はぼくの考えすぎかもしれませんが、とにかくゲーマーは肩身が狭いのです。スマホのゲームならまだしも、PS4やPCでゲームをやっているとなると完全なる陰キャ認定を食らいます。それに学校の先生方からの印象もあまりよくありません。学生ゲーマーにとって、学校があまり居心地の良い場所ではないのです。少なくとも僕はそう感じていました。

しかし、最近になってあちこちから「高校でeスポーツ部が誕生!」というニュースを耳にします。それに合わせるように「全国高校生eスポーツ選手権」といった大会まで作られているではありませんか!またスマホゲームの普及に伴って、高校ではPUBGやCODといったゲーム名が飛び交い、お昼休みにはクラスで対戦会まで行われているのです。

学校でもゲームが徐々に受け入れられるというのはとても素晴らしいことです。特にゲームの部活化は、学校生活を窮屈に感じる学生ゲーマーたちの居場所になるでしょう。そこで気の合う仲間ができたり、一生懸命ゲームに打ち込こんだり。ゲーマーも輝かしい青春が送れる日はそう遠くありません。

しかし、そんな夢のような話にも問題点がたくさんあります。「機材やゲームを部費で賄うつもりか?!」「学業が疎かになるのでは?」といった理由からeスポーツ部設立に反対する学校関係者や保護者も多いのです。

■ ここで物申す!eスポーツ部は作れます!!

eスポーツ部を設立する上で教員や保護者の承認を得るのは避けては通れません。僕はeスポーツがスポーツだと思っているし、人を成長させるキッカケになるとも考えているので、認めてもらえるのは当然のことだと思いますが。しかし、こちらの意見をゴリ押しするだけでは部活化どころかゲームに対する印象を悪くしてしまうかもしれません。

eスポーツ部を設立する上で教員や保護者の承認を得るのは避けては通れません。僕はeスポーツがスポーツだと思っているし、人を成長させるキッカケになるとも考えているので、認めてもらえるのは当然のことだと思いますが。しかし、こちらの意見をゴリ押しするだけでは部活化どころかゲームに対する印象を悪くしてしまうかもしれません。

なので今回は実際に他校で出た問題点を洗い出し、解決策を探していこうと思います!

■ 問題点ってなに?

まず最初に、高校eスポーツ部の問題点はなにがあるのでしょうか?色々調べている中で、GAME Watch さんのeスポーツ部取材記事に面白いことが書かれていることを発見しました。山形県立酒田光陵高校のeスポーツ部を取材する記事の中に、

”「顧問の湯澤先生がeスポーツ部立ち上げの障害になるのは「管理職の理解」「予算」「回線」の3つがある
出典:GAME Watch“山形にeスポーツ教育の風! 入試評価にeスポーツを取り入れる山形県立酒田光陵高校に密着(最終閲覧日:2020年2月12日) ▶詳しくはこちら

と記述してある箇所がありました。

確かに部活動を承認してもらう上では「管理職の理解」は絶対に必要でしょうし、ゲーミングPCや周辺機器などの「予算」の問題も出てくるでしょう。さらにオンラインゲームをプレイするeスポーツ部ならではの問題点として「回線」も問題点の1つとして提示されています。

なるほど、学校の先生、それもeスポーツ部の顧問がおっしゃっているなら間違いありません。しかしぼくはこれだけではなく、「練習方法」 「保護者の理解」の2つも問題だと思います

1つ目の「指導・練習方法」はeスポーツ部設立後の問題です。サッカー部や野球部だったら顧問先生やコーチが指示する通りに練習をしていくことになりますが、eスポーツはまだ若い競技なので指導できる先生やコーチがほとんどいないと思います。なので練習方法に困ってしまう方もいますよね。

2つ目の「保護者の理解」ですが、管理職の理解を得られても、保護者の理解を得られないことには活動もできません。実際にeスポーツ部のある学校でも学力低下などを懸念する声も上がっているのです。これらのことを踏まえると、eスポーツ部を設立するには5つの大きな壁が存在します。

それでは早速この5つの壁を突破するため、その問題点と解決策を見ていきましょう。

■ 問題その1 「管理職の理解」

eスポーツ部を設立するうえで立ちはだかる最初の壁であり、最難関の壁。それが「管理職の理解」です。校長先生や教頭先生がこれらにあたります。彼らの理解なくしては部活動は設立できません。

しかし、先ほど例にあげた酒田光陵高校を含め、eスポーツ部のある高校の多くは教員の方々が自ら立ち上げたケースがとても多いのです。札幌新陽高校(北海道)や酒田光陵高校は学校教員の方々が立ち上げており、八女工業高校(福岡)に関しては校長先生自らが創設したそうです。

現在、eスポーツ部のある高校は増えつつありますが、その多くが教員の理解や学校の方針と一致するなどの幸運に恵まれているというのが事実。しかし、「全国高校eスポーツ選手権」や「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」などのeスポーツムーブメントに影響を受けている面が見られることも事実なのです。高校生の大会が開催されていることや、近年のeスポーツの右肩上がりな動向が知られるようになったら学校側も自然と理解してくれるです。まさに”時間の問題”といえるでしょう。

■ 問題その2 「予算」

eスポーツをするにはゲームソフトのお金だけではなく、ゲーミングPC、モニター、マウス・ヘッドセット……などを揃えるのに多大な費用が掛かります。特にゲーミングPCはデスクトップ型やノート型など多くの種類があります。eスポーツ界ではデスクトップ型が主流ですが、基本的にどれを選んでもPS4やニンテンドーSwitchなどの家庭用ゲーム機が5、6台ほど買えてしまう値段なのです。それが部員分必要となれば、さすがに部費が出ても厳しいです。

とはいえ、吹奏楽部だと数十万する楽器を自腹で買うところも多いですし、格別に無理というわけでもありません。ならば自分で買ってしまえば問題ないと思ってしまう方も多いと思います。

ですが、学校で使うゲーミングPCのために数十万も掛けられるでしょうか。デスクトップ型ゲーミングPCを自分で購入した場合、大半のゲーマーが家でも使いたいはずです。そのためにゲーミングPCをいちいち家から学校へ、学校から家へと運ぶことになってしまいます!吹奏楽部では自分の楽器を持ち運びしているひともいますが、大きいうえに超精密機械でもあるゲーミングPCを毎回毎回運ぶのは現実的ではありません。

そこでノート型を買うという選択肢も出てくるのですが、大会ではほぼ100%デスクトップ型が採用されていたり、デスクトップ型と比べて値段が高いという問題点を考慮するとこちらもあまりおすすめはできません。
これらのことから、ゲーミングPCを家用と学校用で2台用意できるくらいの資金力を持っていない限り、自分で購入するというのはほぼ不可能でしょう。

これらのことから分かるように、eスポーツ部には莫大な費用が掛かります。しかもそのほとんどがゲーミングPCなのです。実際にeスポーツ部を設立した高校も、この予算問題には大変悩まされたそう。しかし2018年の「全国高校eスポーツ選手権」に合わせ、㈱サードウェーブが「スポーツ部 発足支援プログラム」を開始。これは100校限定でゲーミングPC「GALLERIA GAMEMASTER」を3年間無償で貸し出す、といった内容で多くのeスポーツ部設立のキッカケにもなりました。実際にこのプログラムを利用している学校は118校にも上るそうです(2020年2月12日時点、公式HP情報)。現在はゲーミングPC・デスクトップ3台、ノートPC2台、ゲーミングモニター3台を2年間無償+3年目は年間は348,000円(税抜)となっています。

これなら手軽に機材を導入できるので、eスポーツ部を設立する際は要検討です。仙台育英高校(宮城)は「『eスポーツ部発足支援プログラム』を受けられるなら」という条件付きでeスポーツ部を発足し、札幌新陽高校もeスポーツ部発足支援プログラムを先生が見つけたことでeスポーツ部の発足に繋がったそうです。

これらのことから、eスポーツ部発足に必要な機材をそろえるには「eスポーツ部発足支援プログラム」を利用することが一番現実的でしょう。

■ 問題その3「回線」

オンラインゲームを利用するうえで、「回線」は非常に重要な要素です。現在の高校のほぼ100%はネット環境が整っていますが、無線LANなどといったeスポーツには向かないものがほとんど。そんな中、2020年1月21日に㈱サードウェーブが「eスポーツ部発足支援プログラム」の中にNTT網を利用した高速通信回線「サードウェーブ光」を標準セットに組み込むと発表しました。

仮に回線の整っていない学校でも、eスポーツ部発足支援プログラムを利用することでゲーミングPCと光回線を同時に整えることができるというわけです。この問題も「eスポーツ部発足支援プログラム」を利用することが一番手軽に解決できると思います。

■ 問題その4「練習方法」

eスポーツ部発足後、具体的な活動はどうなるのでしょうか?おそらく「全国高校生eスポーツ選手権」に向けて練習をすることになるかと思います。しかし、一体どのような練習するのでしょうか?

サッカー部や野球部などは顧問の先生やコーチなどが部員を指導すると思います。しかし、eスポーツを教える先生やコーチなんて聞いたことがありません。一部は専属コーチがいる学校もあるらしいですが、ほとんどの学校にはいないでしょう。そのため、多くのeスポーツ部員は自主的に練習しているそうです。色々調べた結果、ほとんどの学校はオンライン対戦を利用したり、戦略をホワイトボードでまとめたりしていることが多いと判明しました。そのほかにもYoutubeでプロの配信を見たり、ネットで情報を調べるといったこともしているそうです。

そもそもゲームは自分たちで戦略を考えることも醍醐味の1つ。考えに考え抜いて勝つための「攻略」を生み出すことがプレイヤー自身を成長させるのだとぼくは思います。なので自主的に練習することがeスポーツ部のいいところなのではないでしょうか。

しかし、eスポーツのもう一つの醍醐味は世界中のだれとでも対戦できること。それらを生かして、他校のeスポーツ部員と練習試合などを行ってみるのも面白そうです。

■ 問題その5「保護者の理解」

管理職の理解を得るのと同じくらい「保護者の理解」を得るのも大変でしょう。子どもが学校でゲームをすることに、抵抗感や不安を募らせている保護者はとても多い印象を受けます。よく話題に上がるのが「ゲーム依存症にならないか」と「学業不振になるのでは」の2つ。

これらの意見に対してはきちんとした対策をとっている学校も複数存在します。成立学園高等学校(東京)マルチメディア部では”活動方針”を定めているとのこと。具体的には講義の受講と成績目標の提出、保護者から同意書を貰うなどといった対策をとっています。さらに成績が目標に達しなかったり、保護者からの要望があった場合は、その部員の活動を休止させるなどの徹底ぶり。

わせがく高等学校(群馬・千葉)eスポーツ部では顧問の先生が生徒の指導や監視、部活の終了時間を決めるなどの対策をとっています。

上記の学校が実施している対策をしっかり行うことで、ゲームによる悪影響を防げるのではないでしょうか。ここらの問題は顧問の先生とよく相談することで解決できる問題だと思います。

■ 物申す!eスポーツ部は作れます!

ここまでeスポーツ部が抱える5つの問題点とその解決策について書きました。ハッキリ言うと、eスポーツ部を発足することは十分可能です。今は高校eスポーツの黎明期ですが、これからのeスポーツ業界がより活発化することで、部活化しやすくなるのではないでしょうか。

eスポーツ部ができることでゲーマーたちにのコミュニケーションが生まれます。それだけではなく、学校でゲームをすることによって周りのひとたちにも「ゲームって楽しいよ!」ってアピールできます。

それにeスポーツ部をつくることは、ゲームの素晴らしさや奥深さ、ゲーマーの真剣な態度をより多くの人に伝える絶好の機会です。確かにeスポーツ部は少し変わっているかもしれません。しかし、これからは他の部活動と同じ、もしくはそれ以上に活発な部活動になることでしょう。

eスポーツ部が当たり前になる時代はすぐそこです!!(第4/6回 完)

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