eスポーツプロフェッショナルVol.2 V3 Esports Awakerコーチに聞く『コーチ』という仕事【後編】
前回はV3 Esportsでヘッドコーチを務めるAwakerコーチにお仕事内容や、コーチングとティーチングの違いなどを分かりやすく解説してもらいました。今回はより詳しくお仕事内容を知るため、実際のお仕事の様子を再現して頂きましたよ!さらにはコーチになるために必要なことを教えて頂いたので、コーチを目指したいと考えている方は必見の内容です!
〇Awakerコーチ
2013年から『DetonatioN RabbitFive』や『7th heaven』でLoLのプロ選手として活動。2017年に選手活動を引退し、コーチとしての活動を始める。『DetonatioN FocusMe』でコーチとしての経験を積み、2018年に『V3 Esports』に加入。
〇フィードバックの様子を見学!
――実際のお仕事の様子を見学させてください!
Awakerさん「それではLJL時の録画を使用して、フィードバックの様子を再現しますね。まずLJLはBANピックが終わった時点で、40秒間だけ話し合える時間があるんです。そのため40秒という時間の中では選手たちに伝えたいことを全部伝えます。」
――40秒だけとは大変ですね。
Awakerさん「どこのレーンでゲームを展開するのか、ゲームの勝ち筋は何なのか、など相手の構成や作戦をギリギリまで話し合います。そしてゲームが始まったら、先ほど話したことがきちんとできているかをチェックしながら見ます。試合後のフィードバックの時は、試合前に話したことができていたかを確認するんです。」
――ゲーム前に作戦ややるべきことを確認し、ゲーム終了後にチェックするのですね。
Awakerさん「今回のゲームだとMIDとTOPが主導権を握っている構成なので、きちんと主導権を取れているかをチェックします。しかし、この試合では失敗してしまったんです。そこで原因を探るために、録画を最初から巻き戻してチェックし直します。」
――失敗の原因を細かく追及するために最初から見るんですか?!
Awakerさん「出来るだけ具体的に状況を選手たちと確認するためです。また、選手たちの動きもきちんと考えていたうえでの行動だったかを聞いたりします。“何を考えてこのプレイをしたの?”と聞いて、選手の口から答えが出るまで質問を投げかけることをしていますね。」
――録画を見返してしっかりコーチングをするのですね。
Awakerさん「質問形式で選手に聞くと、選手本人も“こういう理由で失敗してしまったんだ!”と気づけますからね。」
――こうしてお話を聞いていると、選手本人が見返しただけでは行動や失敗の理由が分かりづらそうですね。
Awakerさん「自分で気づくことは相当難しいことだと思います。この試合だと開始4分でBOTレーンに行った選手が倒されてしまうというシーンがあります。なぜ失敗したかはたくさんの理由があるのですが、選手からは“まさかここに敵がいると思わなかった”という発言が出たのです。そこで“なぜ敵がいないと思ったの?”と聞いたんです。そしたら“勘……かな?”と具体性がなかったんですよ。」
――選手は無意識のうちにプレイしてしまったということですね。
Awakerさん「そこで一度自分たちが持っていた情報を整理するために、最初まで巻き戻すんです。自分たちが試合中に持っていた情報を整理して、結果、敵がそこにいたんだということを気づいてもらうんです。」
――選手たちがあやふやだった部分を全て言語化するように導くという感じなんですね。
Awakerさん「こういった話し合いは試合の録画が終わるまでずっと続き、最長で1試合に2時間半かかりますね。結構話していて疲れちゃいます(笑)。」
――それはものすごく疲れそうです。
Awakerさん「選手たちの方がもっと疲れていると思います。負けて悔しい思いの中、コーチや選手から言われるので、めちゃくちゃ辛いはずです。」
〇あまり知られていないコーチの仕事
――試合のフィードバック以外ではどのようなお仕事があるのですか?
Awakerさん「あまり知られていないのですが、一番重要な仕事は運営元やオーナーの方に今の自分のチームの状態を説明することです。なぜこの順位なのか、なぜ勝てないのか、事実と自分の反省点を述べて、来シーズンへの改善案を出すという報告はしています。これは毎回緊張してしまいます。」
――確かに結構緊張しちゃうやつですね。
Awakerさん「あとはアシスタントコーチにお願いしていることなのですが、選手の1週間での目標を決めること+雑談や相談の時間を1対1で設けることも大切です。目標決めは先週の目標が達成できたかどうかを振り返って、コーチと選手で今週の目標を決めます。そして目標を達成するためにはどのような練習が必要か話し合います。」
――選手とのフィードバックですね。
Awakerさん「選手から相談を受ける時間も作るようにしています。あとはフィードバックやコーチングがメインとなりますね。」
――ところでV3 Esportsにはコーチとアシスタントコーチがいらっしゃいますが、両者はどのようなところが違うのでしょうか?
Awakerさん「現在アシスタントコーチを務めている方にはアシスタントコーチ兼アナリストの仕事を任せています。ゲームや試合の情報を調べる・記録をつけることを行ってもらっていますね。あとはスクリムのスケジュールを組むことも任せています。」
――アシスタントコーチはコーチの補助的な役割を担っているということでしょうか。
Awakerさん「基本的にアシスタントコーチの仕事は、コーチによって変わってくると思います。そのためチームによっても仕事内容は全然違うと思いますね。」
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