“ゲームと共にある人生”格ゲープロ 伝説のオタク選手【前編】

ゲーマーゲーマーではPro Gamers World(以下、PGW)所属のプロゲーマーであるレン選手や神園選手、はやお選手に取材をしてきました。

1990年代に一大ブームを巻き起こし今なお熱狂的なプレイヤーが多い格闘ゲームは、eスポーツタイトルの中でも特に長い歴史を持つジャンルです。そんな格闘ゲームがこれからどうなっていくのか、そして格闘ゲームの魅力とは何なのかを同チーム所属、伝説のオタク選手に取材しました!

伝説のオタク選手の考える格ゲーの魅力やこれから、伝説のオタク選手の名前の由来から目指すプロゲーマー像まで、色々なお話を伺いましたよ!お写真と一緒に取材内容をお届けします!

◇伝説のオタク選手 プロフィール

2000年代前半から活躍し今なお強豪として知られるプレイヤーです。過去にはアーケード専門誌『アルカディア」で攻略ライターを務めていた経験もあり、格闘ゲームに関する幅広い知識を有しています。また、現在は大会出場や配信のほか、初心者向け解説動画の作成、メディア出演など活動の幅を広げています。

◇読み合いの応酬に魅力を感じた少年時代

――本日はよろしくお願いします!最初に伝説のオタク選手が格ゲーを始めたきっかけ、そしてハマったきっかけを教えてください!

伝説のオタク選手「駄菓子屋にあった『餓狼伝説』をプレイしたのがきっかけです。当時のゲームはファミコンが主体だったんですが、アーケードゲームはそれに比べると凄いクオリティだったんですよ。実際に動かしてみて美しいし、キャラはかっこいい。初めて必殺技を出せたことが決め手で沼にハマっていきましたね。」

――駄菓子屋から格ゲー人生が始まったんですね。それとは別に本格的にやり始めたきっかけは何ですか?

伝説のオタク選手「当時のゲームセンターではあくまでCPUと対戦してボスを倒してという感じで、あまり対戦をしなかったんですよ。高校3年生くらいの頃に初めて対人戦をしたんですが当然勝てるわけもなく、年上の怖そうなお兄さん2人に負け続けたんですよね。」

――始めたてはなかなか勝てないですよね。

伝説のオタク選手「そのときは相手が一生同じ技だけ使ってきて、私は為す術なく負けていたんですね。そこでどうすればいいかを子供ながらに考えたんです。そして出た結論が、相手の技を見てからこちらも技を出してカウンターを狙う、ということだったんですよ。」

――相手の行動の対策を考える、というのは対戦ゲームの基本ですよね。

伝説のオタク選手「全神経を集中させて見ていたら勝てたんですよ。しかし『あ、これで勝てるんだ』と思ってそれだけを待つようになってしまいました。そうしたら相手はジャンプとか別の攻撃をしてくるようになって、それに対応できなかったんです。そんな感じでなぜ対応できないのか、なぜ勝てないのかと考え始めたら対人戦の奥深さに気付いてどっぷりハマり今に至るという感じですね。」

――少年時代に既に相手との駆け引きをしていたんですね。

伝説のオタク選手「相手のダブルニープレスを見てから昇龍拳で返す、ってどれだけカロリーを使ったんだと今では思うんですけどね(笑)。ただ自分でそうやって考えて、さらに相手がそれを警戒するから別の行動が通るというのも面白いなと感じました。」

――自分で対策と読み合いの応酬に面白さを感じてハマったということですね。

伝説のオタク選手「そうですね。弱冠15、6歳にして意識配分というものを学んだあたり、才能があったんじゃないかと自分でも思いますね(笑)。」

◇ファッションの源流はゲームと仮面ライダー

 

――伝説のオタク選手が全国大会に出場した時のファッションは、今でも時々ネタにされることがありますよね。

伝説のオタク選手「そうなんですよね。なぜ雑誌掲載時にあの写真が使われたのかは不思議ですけど……。話題にしてもらえるのはありがたいことですけどね。」

――あのファッションは何か狙いがあったんでしょうか?

伝説のオタク選手「当時の服装は好きなキャラクターを密かに真似していたんですよ。それであの時ハマっていたのは『ザ・キング・オブ・ファイターズ』のK'(ケーダッシュ)だったんですね。こんなにかっこいいキャラがいるのかってくらいハマってしまって、それを真似してサングラスをつけていた節はあります。」

――ゲームのキャラクターの影響なんですね。

伝説のオタク選手「そうですね。当時はK’を真似するなら今しかないと感じてあの服装になりました。……初めて人に言いますね、これは(笑)。」

――伝説のオタク選手は普段からハットを被っていたり、ジレを着ていたりしていて非常にオシャレだと思っているんですが、こだわりはあるんですか?

伝説のオタク選手「あのハットは『仮面ライダーW』の影響を受けて真似しました。Wの主人公の左翔太郎がハットとジレを身につけていてちょっとでも真似をしたいと思ってハットを被っていましたね。」

伝説のオタク選手Twitter(@den_ta9)より。PGWのユニフォームは選手ごとに異なるのも特徴ですね!

――人に歴史あり、って感じがしますね。

伝説のオタク選手「全部好きなキャラをこっそり真似しているので、恥ずかしいですね。話していて思ったのですが、世間って芸能人のかっこいい人が服を着たら真似するじゃないですか。それが自分は真似する対象がキャラクターなだけで何も変なことはないのかもしれないですね。」

◇20年以上使い続けている名前の由来は罰ゲーム!?

――特徴的な「伝説のオタク」という名前はどんな由来があるのでしょうか?

伝説のオタク選手「これは高校生のときに付けられた名前なんです。友人と罰ゲーム付きの麻雀をやって、自分が負けたんですね。罰ゲームの内容を考えている際に、今度ゲームの大会に行くと伝えたら『やばい名前で出て来いよ』と言われて当時のネタで伝説のオタクという名前になりました。」

――当時のネタというのはどういうものでしょうか。

伝説のオタク選手「当時オタクは今と異なりネガティブなイメージを持たれていたので『オタク』と付けることが決まったんです。でもそれだけじゃ面白くないからもっとやばいやつにしようと付いたのが『伝説の』でしたね。」

伝説のオタク選手「ただ当時の大会ってみんな本名で参加していたんですよ。そこに自分だけ『伝説のオタク』と書いたので、名前が呼ばれたらみんな見ますよね、『誰だコイツ』って(笑)。高校生だった自分は調子に乗っていた割にボコボコにされて1回戦で負けるんですけど。」

――元々は麻雀の罰ゲームで付けられた名前で今までずっと活動しているんですね。

伝説のオタク選手「出場した大会がポイント制で定期的に開かれる大会での累計の獲得ポイントを競うものだたったんです。そのため、次回以降も名前が同じじゃないとダメだと言われて『マジで!?』となったんですよね。そしたら次の大会も『調子乗ってたやつじゃね?』ってボコボコにされました。それでもその名前で活動していたら色々な人に名前を覚えられて、有名な人にも『お前名前面白いな』、『次もそれで出た方がいいよ』と言われて今に至ります。」

――学生時代の思い出やしていたことはありますか?

伝説のオタク選手「1秒で終わっちゃうんですけど、ゲームしかしていませんでした!」

――毎日ゲームセンターに通っていたんですか?

伝説のオタク選手「そういうレベルじゃないですね。当時流行していたカセットウォークマンでゲーセンの音やBGMを録音して毎日聞いたり、ノートがコンボレシピで埋まっていたり。学校にいる時間はもちろん、放課後はゲーセンや友人宅でゲームばかりしていましたね。そんな風に過ごしていたらいつの間にか高校生活が終わっていました。」

――ゲーム漬けの高校生活ですね。勉強はあまりしなかったんですか?

伝説のオタク選手「流石に勉強はしていましたが、テスト用紙の裏にコンボレシピを書いていたとかそんな記憶ばかりです (笑)。」

――じゃあ本当に格ゲーのことばかり考えていたということですね。

伝説のオタク選手「そうですね。恋愛なんてもってのほかですし。」

――少し踏み込んだお話になりますが、甘いマスクにファンも多い伝説のオタク選手ですが、高校時代はやはりモテたんでしょうか?

伝説のオタク選手「いえ、微塵も(笑)。3年生の時なんか女子と会話したことないと思います。あ、それと自分高校3年生まで身長が142cmしかなかったんですよ。高校時代は女子よりも背が低くて下敷きでバンバン叩かれていたような記憶があります。」

◇コンディショニングで意識していること

――コンディショニングや健康面で意識していることはありますか?

伝説のオタク選手「基本的には大会に合わせて調整するんですが、特に強く意識するのは大会の1週間前ですね。その週は睡眠時間をちゃんと確保したり、健康的な食事を取ったりするなど、万全な状態で当日を臨むために規則正しい生活を送るようにしています。」

――ちなみに食事はどのようなことに気を付けているんですか?

伝説のオタク選手「バランスのいい食事を取るようにしています。魚を食べたり納豆を食べたりと、これは身体にいいだろうっていうものを詰め込んでいますね。あとは大会当日は脳が正常に機能する何時間か前に起きて、小魚をバリボリ食べて脳に刺激を与えて、自分の好きなコーヒーを飲んで落ち着いて、というような過ごし方をしています。」

――以前の取材でテレビに出演した時にすごく緊張したと伺いましたが、大会の時も緊張するのでしょうか?

伝説のオタク選手「頭の中真っ白ですし、自分の名前も思い出せないような、そんなレベルですね。」

――対戦中は完全に緊張を忘れて試合に集中するんですか?

伝説のオタク選手「できれば対戦が始まったら平常心に戻りたいんですけど、やっぱり緊張します。見られていることを意識して心拍数が上がったり、酸素が上手く回っていないように感じたりしますね。というのも大衆の面前で失敗をして恥をかいたらどうしようという不安感などがあるからなんです。プロになってしばらくは更にそのプレッシャーが大きくなってしまったんですが、大会で優勝して以降は、次からは弱く思われないだろうという謎の安心感があって、ある程度改善されました。」

――やはりプロになるとプレッシャーは大きくなるものなんですね。

伝説のオタク選手「このことで自分から1つ聞きたいんですけど、『プロになってプレッシャーを感じなくなりました!』という人はいるのかなって。いたら名乗り出てほしいくらいです(笑)。」

◇伝説のオタク選手って怒るの?

――お話していると、伝説のオタク選手はかなり温厚な印象を受けます。普段対戦をしていてイラっとすることはありますか?

伝説のオタク選手「実はないんですよね。格ゲーなら。」

――ということは、格ゲー以外ならあるんですね(笑)。

伝説のオタク選手「意外とありましたね、びっくりしたことに。完全に趣味でやっている『Identity V/第五人格』だと、負けたときに『この気持ちはなんだろう』ってなります。ひどい煽りを受けたときには、流石に憎いという感情が湧きました(笑)。これがゲームで怒るということなんだろうなと知りました。」

――伝説のオタク選手からは穏やかな印象を受けるので意外でした。

伝説のオタク選手「なんでこんなに怒ってしまうんだろうと考えたら、趣味でやっているというのと、あまり実力がなくて勝ちに必死なこともあるのかなと思っています。格ゲーではそんな甘い世界じゃないとよく分かっているので、ただ負けただけでは絶対に怒らないんですけど。むしろ対策しなかった自分が悪いので。」

◇「対戦中に何が起きているかが分からないのが嫌」知識の追求

――練習方法についてなんですが、普段どういうことを意識して、どんな風にトレーニングしているのでしょうか。

伝説のオタク選手「時期にもよるんですが、例えばリリース直後のゲームであれば自分は勝つためのハメ技などから始めますね。ただ何を重点的にやっているかと聞かれれば、知識面だと答えます。対戦中に何が起きているか、何をされているかが分からないのが嫌なので、自分はデータを完璧に覚えるための時間を一番多く取っていますね。」

――対戦中に盤面を把握するために知識の習得に重きをおいているんですね。

伝説のオタク選手「格ゲーって膨大な、それこそ学問レベルの知識が必要だと思うので、英単語帳にフレームデータを書いたり寝ている間に聞いたりしつつ、もちろん対戦もしっかりやっています。あとは操作感というか相手側はこういう体感でやっているんだと知るために全キャラを触ってみたりしています。そういう練習が一番多いと思います。」

――上級者に聞くとそんなにフレームを気にせずに体感で有利不利を覚えるとのことで、細かく覚える人はあまりいないイメージがあったのでびっくりしました。

伝説のオタク選手「確かに対戦が一番楽しいですし、データの暗記なんて……ってなるのも分かります。ただ自分は好きですね、フレームなどを暗記して全部数字とかで画面内のものを解明できるくらいには。知識があればあるほど状況や起こりうる事象などを予測する幅が広がったり、発想力になったりしますし。」

――やはり知識は大切なんですね。

伝説のオタク選手「他に知識を増やすといい理由がもう1つあるんですよ。以前は自分が勝つためだけにやっていた面があったのですが、今は動画にして他の人に発信をしたいと考えています。それなので間違ったことを伝えたくないということもあり、より確実に知識を増やそうと思って取り組んでいますね。」

――知識を増やして自分が上達するだけでなく、発信することにも繋げているんですね。

伝説のオタク選手「間違った情報を発信することほど恥ずかしいものはないと思っているので。」

◇強さと人に教えることはまったく別の能力

――伝説のオタク選手はアーケードゲーム専門誌の『アルカディア』のライターとしても活躍していらっしゃいました。どういったきっかけでなったんですか?

伝説のオタク選手「アルカディアで既にライターをやっていた人と知り合いだったのですが、その方にやってみたいと声をかけたんです。元々アルカディアの大ファンだったので、俺強いから使ってくださいよ、そんなノリで書かせていただいたのがきっかけです。」

――ライター時代に楽しかったことや、逆に苦労したことはありますか?

伝説のオタク選手「楽しかったことは自分の勝ち方や理論などの考えを多くの人に伝える機会を得られたことですね。逆に苦労したのは、それの言語化が本当に難しかったことです。当時は何でもできるとか、言ってしまえば調子に乗りすぎていた時代なんですけど、いざ書いてみろと言われると『あれ?』ってなってしまったんですよね。そこで学んだのは強さと人に教えることはまったく別の能力だなと思いました。」

――言語化して人に伝えるのは、ゲームとはまた異なるスキルが必要ということですね。

伝説のオタク選手「個人に教えるか、多くの人に伝えるかでも変わりますし、相手のレベルによっても変わりますしね。自分が最初に提出したものはめちゃくちゃマニアックなことを書いていたんですが『こんなので普通の人が分かると思うか』と怒られました。もっと大衆が分かるような言い回しにしないと伝わらないだろと、今振り返ってみるとその通りだなと思いますね。」

伝説のオタク選手のインタビュー前編はいかがだったでしょうか?まさかの名前の由来や知識の習得に重きを置く理由、ライター時代のお話も伺うことができましたね!

後編では伝説のオタク選手が考える格ゲーの魅力やこれから、そして理想のプロゲーマー像など、笑いあり感動ありになっています!近日公開予定ですのでお楽しみに☆

伝説のオタク選手がゲスト出演のイベントが開催されます!

12月15日(水)20:00~にはPGWの伝説のオタク選手、はやお選手が出演するイベントをゲーマーゲーマーより開催いたします。トレーナーの桑原さんと、今回もゲームやコンディショニングについてのぶっちゃけトークを繰り広げる予定です。

・選手のことをもっと知りたい!
・プロゲーマーとトレーナーの異業種トークに興味がある
・選手に直接聞いてみたいことがある
・日々のコンディショニングについて興味がある

何か1つでも気になった方はぜひご参加くださいませ!

関連記事一覧