格ゲープロ 神園選手が見る格ゲーの”リアル”【後編】

様々な格ゲーに触れており、なおかつLoLに対する造詣も深い神園選手。前編(https://gamer2.jp/7530/)では『ギルティギア』をキッカケに出会った師匠のことや、物事を客観的に、そして冷静に判断する大切さを語ってくれました。

後編では格ゲーシーンの今、プロとはどういうものなのかなどをたくさん語っていただきました!それでは早速本編に入りましょう!!

〇格ゲーが若者に流行らないのはなぜ?


――現在の格闘ゲームシーンは昔ほど流行っておらず、特に10代20代の若年層の間ではプレイヤー自体が少ないと思います。神園選手は今の格ゲーシーンをどういう風に見ているのでしょうか?

神園選手「その通りだと思います。若い人たちは単純に格ゲーに興味がないのはもちろん、やってもすぐに勝てるものではないことも要因の1つだと考えます。また今大人気のゲーム実況者って格ゲーやLoLはやっていませんが、FPSはみんなやっていますよね。FPSは流行っているジャンルというのはもちろん、上達が早いから気持ちいい瞬間をすぐ味わえるんです。でも格ゲーやLoLだと最初は覚えることが多すぎて楽しさを感じるのは難しいと思います。だからみんな手軽に遊べるFPSをプレイするんじゃないですかね。」

――確かにFPSはLoLや格ゲーと違って、最低限覚えることが少なく、銃の射撃やキルするだけでも楽しいと思えますね。FPSはそういった簡単に楽しめるところが人気の理由なのかもしれません。
神園選手「格ゲーって最初の難しさはLoLに近いんですよね。加えて古参プレイヤーの強さ、マッチングの狭さもあって初心者はなかなか勝てません。そこで勝つために勉強が必要になるんです。一方FPSは撃って、走って、勝つ、と分かりやすく、さらに多人数で協力して遊ぶこともできるので初心者でもやりやすいんですよね。しかし格ゲーは1人で対戦するものだし、自分とまったく同じレベルの対戦相手と当たることはなかなかありません。そこで高い壁を感じてやめてしまうんだと思いますね。今はゲーム自体をシンプルにして初心者参入を狙っている格ゲーは増えてきていますが、それで新規の人が続けられるかはわからないですね。」

――つまりFPSは簡単に楽しいところまで行けるけど、格ゲーは「勉強」が必要だったり、自分と同じレベル帯がいないから難しかったりするということですね。確かにそれだと格ゲーを始めるのは敷居が高いなと感じちゃいます。

神園選手「あとは初期投資にお金がかかるというのも問題点の1つですね。昔のゲーマーってゲームにお金を払うことが当たり前だったので抵抗がないんですよ。でも今の人って課金ガチャに抵抗はないけど、ゲーム機やゲームソフトを買うのに抵抗があるって人は多いと感じます。なので格ゲーを基本プレイ無料にするっていうのも一つの手だと思いますね。」

〇格ゲーの人気復興に必要なのは「ふれるキッカケ」

――格ゲーが再びかつてのような人気を取り戻すにはどうすればいいと考えますか?

神園選手「現実的ではありませんがテレビで取り上げたり、学校の授業でやったりとかですかね(笑)。おそらく格ゲーをプレイする、見るキッカケがないのが一番の要因なんですね。また大会の賞金に関しては上がったところであまり意味はないと感じます。仮にゴルフの大会の賞金を狙う人がいて、今から急にゴルフを始めるのって現実的じゃないですよね。」

――確かにキッカケがないだけというのはそうかもしれません。

神園選手「ゲームをやる人自体は昔と比べるとめちゃくちゃ増えていますよね。ただそれが格ゲーじゃないってだけなんです。」

――高校eスポーツでも格ゲーが競技タイトルとして選ばれれば、若者の間で流行る可能性もあるのかもしれません。しかし格ゲーは個人競技だから高校eスポーツのタイトルとして選ぶべきではないという意見も出ています。そこに関してはどうお考えでしょうか?

神園選手「確かに高校eスポーツは団体戦での連携力を問われている部分は多いので、言われてみればそうかもしれません。でもたとえば剣道やテニスだって個人競技なので、格ゲーだけ外されるのは納得がいきませんね(笑)。」

〇格ゲーとLoLの違い


――お話を聞いていると格ゲーは人口の少なさが問題ですよね。

神園選手「そう考えるとやっぱりLoLってすげぇなぁーって思いますね。最初の方のLoLの大会の視聴者数って数百人ほどだった気がします。でも今は規模が大きくなって、3万人くらいの視聴者数まで増えていますよね。やはりこれはそれだけ企業が一本のゲームにすべてを注いでいるってことなんです。ゲームをリリースして終わりではなく、ゲームの内容やイベントなどどんどん変わっていくんです。特にゲーム内容に関しては、基本のルールは同じでもメタ(※)は変わっていきます。この同じルールの中で変わっていくのがLoLの面白さですよね。だからこそ10年以上愛されるゲームなのかもしれません。」

(※)メタとは「高次の」という意味で、実際にプレイするゲームの試合よりも大きな視点を指し、そのゲーム内での流行や環境のことを指す。たとえば、トップメタといえば「最も流行っているもの(≒最も強いもの)」というような意味で使われる。元々はカードゲームでよく使われる言葉。

――LoLは企業が率先して盛り上げていく工夫をしたから人気が出たということですね。

神園選手「格ゲーの場合だとゲームをリリースしたらアップデートしながら次の新作につなげていきます。確かにゲームメーカーも会社だから1本のゲームだけにすべてを注ぐのは難しいですし、どうしても限界はあると思います。LOLのようなやり方はなかなかできないと思います。」

〇楽しみ方は1つじゃない「別に上手くならなくたっていいんです。」


――これから格ゲーを始めたいと思っている人たちにアドバイスはありますか?

神園選手「車の運転と一緒で、最初から出来る人はいません。なので長い目で見てプレイしていくことが大事ですね。あとは勝ち負けがハッキリしやすいので辛くなったり、焦りも出てくると思います。そこで自分は自分と認めて、周りと比較しないことが大事です。そして負けを気にしすぎないことも大切です。」

――自分のペースで格ゲーに挑戦していくということですね。

神園選手「負けまくると人っておかしくなっちゃうので。そういう時は別の格ゲーや他のゲームをやるといいと思います。色々なゲームを遊んで1番好きなものをやればいいんです。また楽しみ方は1つではありません。勝ち負けを楽しむもよし、自分の成長を楽しむもよし、なんならゲームを観戦したり、話したりすることが楽しいってことでもいいんです。別に上手くならなくたっていいんですよ。」

――格ゲーって勝ち負けでしか楽しめないと思っていたので、様々な楽しみ方があるのは意外です!

神園選手「とにかくゲームを嫌いにならないでほしいですね。そうなってしまうとゲームを見ることも嫌いになってしまうと思います。」

――たしかにプレイが苦手でも観戦という楽しみ方もありますよね。

神園選手「プレイはしなくても大会を観戦したり選手を応援したりすることも全然ありだと思います。でも大会を観てこのプレイは凄いなって思えるのは、ゲームを自分で遊んだ人だからこそ分かることなんです。なのでゲームを遊ぶってことはとても得をしているんです。別にゲームをやり続ける必要はなく、やってみたということが大事だと思いますね。またプレイヤーだけだと先細っちゃうので、どちらかというと観戦者が増えた方がいいのかもしれません。そうしてみんなで楽しんで、周りに楽しさを発信していってほしいですよね。」

――色々な楽しみ方をする人が楽しさを発信していったら、格ゲーの魅力もどんどん伝わりそうですね。

神園選手「格ゲーはCPU戦を1人でやってもいいけど、いずれ対人戦の楽しさに気づくと思います。そうしたら周りに楽しさを広げていってほしいですね。」

〇相手を納得させたうえで勝つ


――神園選手が格ゲーをプレイする上で譲れないことや美学などはあったりするんですか?

神園選手「対戦中は納得したいし、相手も納得させたいと思っています。運とかではなく『これは負けた!』と相手に納得してもらえるようなプレイをしたいんです。相手にやりたいことをやらせてそのうえでお互いが納得して勝てれば最高ですね。」

――相手さえも納得させるプレイスタイルを目指しているのですね。格ゲー界隈だと10先(※10本先取の試合形式。じゅっさき。)を行って強さを決めるという方法が一般的ですが、それについてはどうお考えですか?

神園選手「10先なんて10先やった結果でしかないですよね。結果しか見ていないからあんまり意味はないと思います。確かに10先で勝った方が強いというのは話は早いけど、格ゲーの『勝ち方』ってほかにもあるのではないでしょうか。」

――結果だけを見るのではなく、もっと大きな視点で見るということですね。

神園選手「ただ単に10先で勝つよりも、この人やりこんでいるなと思えるほうが凄いことだと思うんですよ。あとはキャラ差(※)もあるので10先の結果だけではなんとも言えないですね。それに10先をやるってなったら、その戦いは10先用の戦いになってしまうんです。なので自分はあまり何本先取とか本数を決めて勝負はしたくないですね。」

(※)キャラ差とは、キャラクター同士の相性による有利不利のこと。格ゲーは1対1のゲームなので、相性が色濃く出る傾向にある。

〇神園選手の目指すプロゲーマーとは


――現在のプロゲーマーには様々なものが求められると思いますが、神園選手が目指すプロゲーマー像を教えてください!

神園選手「理想でいったらウメハラ選手・ときど選手・かずのこ選手ですね。彼らが合体したらどんな格ゲーマーも勝ちようのないくらい最強ですね(笑)。」

――具体的には3選手のどういったところを見ているのでしょうか?

神園選手「ウメハラ選手は格ゲーをずっとプレイしているし、なにより諦めない姿勢を尊敬しています。ときど選手は勝ちに対する貪欲さですね。かずのこ選手は単純にゲームが上手すぎます。かずのこ選手とは元々同じチーム(※)だったんですけど、特に攻略の早さが凄いと思っています。そして彼の言葉ですごく胸を打たれたものがあって、それは『大会は練習してきたことを出すだけ』というものです。普通に考えたらその通りなんですけど、大会って実力以上のことが出てくるときもあるんです。でもそれってどこかで練習したから出てきただけなんですよね。」

(※)チーム『GODS GARDEN』のこと。GODS GARDENは総師範KSK氏を始めとした格闘ゲーマー団体で、独自の大会なども運営していた。神園選手とかずのこ選手はこのチームで活動していた。

――神園選手は3選手の凄いと思うところや考え方など全てを吸収したプロゲーマーを目指しているということでしょうか。

神園選手「なれたらいいけど、別にならなくてもいいのかなとも思います。全員がそこを目指す必要はないし、自分もそこを目指す必要はないのかなと感じますね。また自分にしかない武器があるとすれば、それはプレイヤーでもあり実況者という点ですかね。」

――理想は3選手を合体したものだけど、自分の個性であるプロゲーマー×実況者の立場を極めていくということですね。

神園選手「自分は色々とやっているので、ある意味何でも屋ですね。幅広くプレイできるし、なんでも実況できます。あとゲームの解説に関しては、ぶっちゃけそこまでスペシャリストでなくてもいいのかなと思っています。そもそも全員がその目線で見ているわけではないし、マニアックなことしか話せないなら解説の意味はないですよね。なので現在は分かりやすい解説が求められているんです。あとは盛り上がっているところを共有できたり、一見さんをどれだけ引き留めたりできるかが大事だと思います。」

〇プロゲーマーにはなるべきか?!

神園選手と、前回取材したレン選手のツーショットです!(レン選手取材:https://gamer2.jp/7185/

――最後にプロを目指したい若者へ一言お願いします!

神園選手「……。これは難しい質問ですね。1つ言えることがあるならば、今プロゲーマーを目指しているっていうのはすごいリスクがあると思います。色々な選択肢がある中でプロゲーマーを選ぶというのは相当な覚悟が必要だと思いますね。自分の場合はゲームするしかない状況で、運よく収まったって感じでした。だけど色々なことが出来る可能性がある中でプロゲーマーを選ぶんだったら覚悟して臨まなければいけません。また今は黎明期ということもあり、いろんなことを自分でしなければいけません。周りに期待できないので、自分で考える必要があります。」

――確かに若いうちから目指すのはリスキーかもしれません。あとはゲームの方も変わっていくので、ついていくことも大変そうです。

神園選手「どのゲームをやるかに関しては、好きなゲームをやればいいと思います。でも若い子は親を納得させることが一番の課題ですかね。自分は結果的に親が納得したって感じです(笑)。」

――やはり色々な面で大変なんですね。

神園選手「自分の場合は格ゲーを続けるか死ぬかの2択だったので、結果的にプロゲーマーになったって感じです。周りは優しいことを言うと思いますが、運や実力は必要だし、それにただ上手ければいいだけじゃないので、結構厳しいんです。なんなら実力が2割下がってもいいので、喋れた方がいいですね。社交性はとにかく大事にしたほうがいいです。思っている以上にプロゲーマーって色々求められるんです」

――ただゲームが上手ければいいというものではないんですね。

神園選手「ゲームの腕前さえ良ければいいと思っている人は多いと思いますが、それが一番間違っているんです。プロになるってことは誰かにお金を出してもらい、面倒を見てもらうってことなので。そういうこともあって自分の知る限りのプロゲーマーは喋れる人が多いですね。」

――確かに有名なプロゲーマーは社交性が高いイメージがありますね。

神園選手「別に誰かにとっては嫌なやつでもいいんですよ(笑)。全員が性格いいってわけではないので。でも最低限話せるくらいの社交性は持っていてほしいですね。」

――プロになるにはゲームの腕前はもちろん、社交性や運など必要なことがたくさんなんですね。ではプロゲーマーになるには具体的に何をすればいいのでしょうか?

神園選手「最短ルートでいくなら人口の多いゲームタイトルをやることです。でも自分みたいにそうではないゲームタイトルでもプロになれるので、必ずしも有名なゲームタイトルをプレイするという必要はありません。自分が所属するPGWはゲームに対する熱意で見てくれて、結果的にプロゲーマーになることができました。ただそういう熱意で見てくれる人もいれば、結果でしか見てくれない人もいますね。」

――熱意ももちろん、結果も残さなければプロになるのは難しそうですね。

神園選手「大事なのは自分が一番好きなゲームをやることですね。なんなら別にプロゲーマーにならなくてもいいいですし、その熱意をプロゲーマーに向ける必要もありません。本当にやりたいことだったらなんでもいいんです!」

神園選手のロングインタビューはいかがでしたでしょうか?格ゲープロとしての目線はもちろん、様々なゲームのプレイヤーや実況者として活躍しているからこそ出来る考え方などはとても参考になりましたね!

また神園選手の考えるプロゲーマーの在り方については本当に深かったですね。プロゲーマーはそのゲームが好きで上達したいと思った人がなるものであって、必ずしも全員がプロになる必要はない、本当に自分の好きなことをやることが大事だということに気が付かされました。自分にあったプレイスタイルでゲームをプレイすることって本当に大事ですよね!

やはりゲーマーとして生きている以上、絶対に避けて通れないのがゲームの上達論やゲームとの付き合い方。皆さんも今回の神園選手のインタビュー記事を機に、自分はどういったプレイヤーになりたいのか、今一度考えてみてはどうでしょうか?

神園選手、レン選手がゲストのイベントを開催!

ゲーマーゲーマーでPGWの神園選手、レン選手、そしてチームATHLETE Q10でおなじみの桑原先生をゲストに招いた無料のZoomイベントが開催されます!気になる方はこちらの特集記事をご覧ください!

神園選手を含むPGWの選手の皆様には、サプリメントモニター企画「チームATHLETE Q10からの挑戦状」にもご参加頂きました。
選手や競技の紹介を含む前編記事と、気になるモニター結果を含む後編記事もぜひご覧ください!

関連記事一覧