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《第3回》毛見誓也のコレで良いのか!? 日本のeスポーツ「香川県のゲーム規制は今すぐ撤回しろ!!」【連載全6回】

◆ 毛見誓也
洋ゲー、映画、自販機巡りが好きな高校生ゲームライター。ゲームを仕事にしたくてゲームクリエイターを目指すも、プログラミングと3DCGを学校で学びつつ同級生とのレベル差に悩み挫折を味わう。そんななかゲームライターという仕事を知り、海外ゲームのレビューや攻略ブログの運営をスタート。より多くの人に「面白い!!」と思ってもらえるような記事執筆を目指し日々邁進中。
◇洋ゲーのレビューや攻略、ニュースなどを紹介/げーむのはらわた

1月10日、突如香川県から発せられたニュースが日本中のゲーマーを震撼させました。なんと県条例素案の一つに、「ゲーム利用時間制限」というものが入っていたことが判明したのです!

このニュースが目に入ったときは、思わず目を疑ってしまいました。まさかこの日本でゲームが規制される日がくるなんて夢にも思いませんでしたからね。

「高校生以下の子供を対象にゲームやネットの利用時間を制限する」といった内容の条例素案には、多くのゲーマーたちや若者からの批判の声が殺到し、Twitter上では「#ゲーム禁止」が日本トレンド入りするなど大きな反響を呼びました。

これはまさにゲーマーの自由を奪っているも同然。もしこんな条例が制定されてしまったら、香川県の若者ゲーマーたちはゲームを楽しめなくなってしまうのでしょうか?

■ 「平日は60分、休日は90分」

ことの始まりは、1月10日に香川県議会がゲームやインターネット依存症対策として、利用時間の制限などの具体案を委員会に示したところから。

高校生以下の子供を対象に、ゲームやネットの利用時間を平日は60分、休日は90分に制限するといったことが主な内容です。

その後は協議したのち、県民からのパブリックコメントを募ったうえで、2月の定例の本会議に案を提出するとのこと。ゲーム・ネット依存症に対する条例としては、全国で初となるそうです。

先ほども述べた通り、ゲーマーを含めた一般層からはこの条例をよく見られていません。そもそも依存症対策といえど、すべての子供を対象にゲームの時間を決めつけるのはちょっと強引な気もします。

しかし、この条例にはプレイ時間のほかに、ゲームを禁止する時間の制定についても言及しているのです。それは素案本文の第18条の2にある一文「~とともに、義務教育修了前の子供については午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめるルールを遵守させるものとする。」の部分。具体的に言うと、中学生までの子どもたちは午後9時、高校生は午後10時以降はゲームの使用を禁ずるということです。

これに関しては僕も賛成です。夜中にゲームやネットをしてしまうと、睡眠不足になり、翌日に支障が出てしまいますよね。それに育ち盛りの時期ならなおさら。不健康なことから子どもを遠ざける対策としては良いと思います。

本来、こういう条例は危険なことから子どもたちを守るためにあるべきです。夜間に禁止するならまだしも、プレイ時間を決めちゃうのはやりすぎでしょう。これに関しては、現代の若者たちの”楽しみ”を完全否定しているといっても過言ではありません。

■ 中国・韓国の例

この強硬手段とも取れる本条例ですが、お隣の中国や韓国はすでに似たような政策を実施しているのです。

韓国では2013年から「青少年夜間ゲームシャットダウン制」という制度を導入しています。これは16歳未満のユーザーは午前0時から午前6時までの間、オンラインゲームを禁じるというものです。なお、これらの制度は「ゲームメーカー」に向けて適用されるもの。なのでこの制度に反した場合、メーカーは2年以下の懲役、または罰金が課されます。

そして中国では、2019年から「オンラインゲーム利用時間制限」などの規制処置を打ち出しました。これは18歳未満のゲーム利用時間を平日は90分、休日は180分といったルールの他に、夜の10時から朝8時まではプレイを制限するといった内容になっています。そしてこれらは全て実名登録をして管理しているそうです。

韓国の条例に関しては、子どもたちを守るという本来の意味を成しているのでありだと思います。しかし、規制したことで発生したデメリットも存在しています。実際に韓国ではこれらの制度を導入したことによって、国内ゲームメーカーが30%も急減し、1300億円にものぼる市場委縮をもたらす結果となりました。そのため、現在は親の許可があればゲームを無制限で出来るようになるなど規制が緩和しています。

■ 日本のeスポーツシーンへの影響

では仮にゲーム利用時間制限が実施された場合、日本のeスポーツシーンにはどのような影響が考えられるでしょうか。

まず最初に香川県内でのeスポーツ普及への動きが完全に止まってしまうでしょう。eスポーツシーンは若者が中心となってコミュニティを形成している場合がほとんどです。しかし「ゲーム利用時間制限」を適用されるのは高校生以下のこどもたち。そうなってしまえば若者はeスポーツに関わりたくても関われなくなり、結果としてeスポーツシーンは終息してしまうでしょう。

さらに高校でのeスポーツ部設立にも関わってきます。今や国内では大きなeスポ―ツ大会の1つである「全国高校eスポーツ選手権」の開催の影響もあって、多くの学校でeスポーツ部が続々登場してきているのは皆さんご存じでしょう。

しかし、「ゲーム利用時間制限」は高校生も対象なのです。なのでこんな条例のある県でeスポーツ部なんて出来るわけがありません。仮にできたとしても練習時間が足りず、まともに活動できないでしょう。

今や日本中のゲーマー高校生が出場している大会に、香川県の学生ゲーマーだけが大きなハンデを背負うことになるなんて明らかにおかしいですよね。

では、日本全体の影響はどうでしょう。今のところ、この条例を制定しようとしているのは香川県のみなので、韓国みたく市場に大きな影響は今のところは出ないと思います(大阪の松井一郎市長も同じようなことを匂わせていますが)。

ですが、もし香川県を筆頭に、多くの都道府県でこのような条例が制定されたらどうなってしまうのでしょう。おそらくeスポーツ普及への道は確実に消えてしまいます。それに夜間のゲームプレイを禁じただけで大きな損害が出てしまった韓国の例を踏まえると、日本のゲーム市場規模は大きく減少してしまうでしょう。

このような事態はあくまで最悪のシナリオですが、もし本当に実施されたなら、eスポーツどころかゲーム文化がなくなってしまうかもしれません。まぁ、東京eスポーツフェスタに小池都知事が来るくらいなので当分は大丈夫だと思います。多分……。

■ 香川県議会に物申す!

今はeスポーツを筆頭に、ゲームの人気が高まりつつある時期です。だからこそこんな条例が実施されてしまえば、日本のゲーム文化に大きな痛手になるのは間違いありません。

NHKのネットニュースが事実なら、この規制はなんの意味もなさないのではないでしょうか?確かにゲームを禁止した方が一番手っ取り早いことは間違いありません。しかし、現在の日本では若者をはじめ多くの人たちがゲームを楽しんでいます。それに最近ではeスポーツという形でゲームに真剣に取り組む動きまで出てきていて、地方活性化の一環としても活用されているのです。これらのことを知ってもなお、規制をするのですか?

それに他の対策は考えなかったのでしょうか。規制以外にもゲーム依存症を防ぐ対策はあるはずです。例えば学校などの講演会でゲームとの付き合い方を教えるなど、子供たちの納得のいく形で防いでいくことが重要だとぼくは考えます。

今回の条例はゲーム依存症から子どもたちを守るために作られたもののはず。それなのに肝心の内容は、ゲームの楽しみすら奪うものとなっています。無理やりゲームを禁じたところで大きな反発が起こるし、純粋にゲームを楽しむ子供たちが可哀そうです!!

「ゲーム利用時間制限」などというルールでゲームを規制したところで、なんの効果も表れないのは火を見るより明らかです。そして僕たちゲーマーは、そのような条例でゲームに対する情熱がなくなるくらいやわではありません!なので今すぐこんな条例素案は撤回すべきです!!!(第3/6回 完)

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