eスポーツプロフェッショナルVol.2 V3 Esports Awakerコーチに聞く『コーチ』という仕事【前編】

ゲームを競技、いわゆる“eスポーツ”として盛り上げていこうという風潮がますます強まってきています。そんな中、eスポーツを活性化させるため、今も様々な場所・方法で活躍している人たちはたくさん存在するのです。

しかし、eスポーツに関わる仕事って一体どんなものがあるのでしょうか?そこでゲーマーゲーマーではプロ選手はもちろん、eスポーツを陰で支える人たちの仕事に密着し、その仕事の魅力ややりがい、どうやったらなることが出来るのか等、たくさん聞いちゃう『eスポーツプロフェッショナル』をお届けします!

第2回目はプロ選手たちをサポートする『コーチ』です。技術面を指導するといったイメージが強いコーチですが、一体どんなことをしていうのでしょうか。そこで今回はV3 Esports LoL部門でヘッドコーチを務めるAwakerコーチにインタビューを行いました。コーチは一体どんなお仕事をしているのか、大変なこと、やりがいなどたくさん聞いちゃいました!それでは早速お写真と共に取材内容をお届けします☆(取材日:2022.4.12)

〇Awakerコーチ


2013年から『DetonatioN RabbitFive』や『7th heaven』でLoLのプロ選手として活動。2017年に選手活動を引退し、コーチとしての活動を始める。『DetonatioN FocusMe』でコーチとしての経験を積み、2018年に『V3 Esports』に加入。

〇数年前まで日本のeスポーツチームにはコーチがいなかった?!

――本日はよろしくお願いします!AwakerコーチはV3 Esports LoL部門にてコーチを務めているとのことですが、具体的にコーチってどんなことをするのですか?

Awakerさん「LJLに出場しているチームに限らず、ほぼ全てのコーチと呼ばれる人たちは選手たちへフィードバックを行っています。LoLにおけるフィードバックだとゲーム内での問題点の指摘から修正方法、情報の共有がメインとなります。」

――選手たちのゲームプレイを見てフィードバックを行うのですね。

Awakerさん「LoLは選手が5人いるのですが、彼らのチーム的な問題から個人的な問題まで全てフィードバックを行います。これが一番比重の大きな仕事であり難しい部分でもありますね。」

――チーム全体から個人の問題まで細かく見ているとは大変そうです!ではなぜコーチを始められたのですか?

Awakerさん「私は元々LJLに出場するプロ選手だったのですが、自分の能力に限界を感じて引退を決意した時期がありました。そんな時にコーチという存在を知ったんです。ちなみに海外ではコーチが既にいたのですが、日本のeスポーツチームにはいなかったんですよ。」

――Awakerコーチの選手時代はまだコーチという存在がいなかったのですね!

Awakerさん「また、私はゲームに対する考え方を人に教えることが好きでした。理屈で説明をすることは選手時代から得意だと思っていたので、そこでLoLコーチを目指そうと決心したんです。」

――自分の得意なことを活かせるということでコーチを目指したのですね。

Awakerさん「当時は7th heavenというチームに所属していて、試しにここの2部チームを指導しました。そしたら選手たちからは好評で、なおかつ自分も自信を持てたのでプロのコーチをやろうと思い始めました。」

――まさにAwakerコーチがコーチを目指し始めたあたりから日本のeスポーツチームでもコーチが増えていったのでしょうか?

Awakerさん「当時は選手が日本で一番ゲームの知識を持っていたので、そもそも選手を指導できる人間がいなかったんです。中には韓国のコーチをを招いたチームもあり、それと同時期に私もコーチを目指し始めたって感じですね。今はLJLの解説を務めているリールベルトさんがコーチを始めたのも同時期でした。この2017年あたりはからコーチが一気に普及した時期でしたね。」

〇Awakerコーチが受けた様々な相談とは

――コーチというお仕事の魅力ややりがいってどんなところだと考えていますか?

Awakerさん「選手たちが自分の伝えたことを理解してくれたり、練習したことが実戦で出来るようになったりと、選手の成長を見ることが出来たときはもちろん嬉しいです。しかし、私は選手たちが自分のことを人間として信用してもらえた時に嬉しさを感じます。」

――人間として信用されるとはどういったことなのでしょうか?

Awakerさん「ゲームのことはもちろん、人生相談や恋愛相談などのプライベートな相談をしてくれるようになった時は本当に嬉しかったですね。選手たちとこういった関係を築くことが出来るのはコーチの魅力かなと思います。」

――頼られている証ですね!ではこれまで受けた相談の中で特に印象に残っているものはありますか?

Awakerさん「体調が優れずゲームに集中できない、でも理由が分からないと相談されたことがありました。でも僕はすぐにピンときました。ちょうどその相談を受けたのはこれから夏に入っていくような暑い時期だったのですが、彼は暑さのせいで食欲が湧かずコーヒーばかり飲んでいたんです。」


――ご飯を食べていないのはマズいですね。

Awakerさん「当時のチームはご飯はきちんと用意されていることも少なく、それが原因だったのかもしれません。そこで私は調理師免許を持っていたので、彼にご飯を作ってあげることにしました。そうしたらご飯を食べてくれるようになり、1週間後にはパフォーマンスも上がったんです。このことで選手自身も食事の大切さに気が付いてくれて本当に良かったです。」

――料理もされるとはコーチの鑑ですね!

Awakerさん「高校の時に取得した調理師免許が役に立って良かったです。」

――他には何か相談事は受けるのですか?

Awakerさん「チームの中には音楽の趣味が合う選手もいて、選手から“最近いい曲を出しているアーティストはいませんか?”みたいなことを聞かれることもありました。また、逆に向こうからオススメの音楽を教えてくれることもありましたね。」

――料理に趣味のお話とAwakerコーチは選手たちにとってコーチ以上の存在ですね!

Awakerさん「選手たちが話しやすいようには心がけています。しかし今はアシスタントコーチの方に選手たちとの距離を縮めてほしいので、選手たちとは少し距離を取ろうと考えています。1人でコーチをする時は選手たちとの距離感を近づけることを意識していましたが、ここの部分はコントロールが必要な部分ですね。」

――それは大変ですね。

〇選手に教えるのはNG?!

――Awakerコーチは普段のフィードバックで選手とはどのようなやり取りをしているのでしょうか?

Awakerさん「基本的にはスクリムをした後に、チーム全体の問題点や試合で発生してしまったミスの原因などをフィードバックしています。その時は私から選手へ意見を投げて、選手たちから新たな意見を投げ返してもらうという方式で行っています。こういったことがメインになるのですが、今はコーチングという質問形式を採用しています。」

――コーチングとは一体何なのでしょうか?

Awakerさん「例えばスクリムで何か問題が起きたら、“ここのポイントってなぜこんなミスが起きたと思う?”と質問を投げかけるコーチングを行います。そこで“こうすれば、ああすればよかったよね”と教えてしまうのはティーチングになってしまいます。最初から答えを教えるのではなく、選手自身で答えへたどり着けるように質問で導いてあげるんですね。しかし、このコーチングはとても時間がかかる方法で、今シーズンなんかはものすごい時間がかかってしまいました……。」

――答えを教えるのではなく答えへ導くことがコーチングなんですね!ちなみにスクリムが終わった後のフィードバックってどれくらい行うのですか?

Awakerさん「ゲームごとによって変わるのですが、早いときは5~10分で終わります。どこのチームも試合間にフィードバックを行うので、この5~10分の間で終わるように努力していると思います。また、スクリムは3試合行うので、1、2試合目は5~10分、3試合後はガッツリとフィードバックを行う形式が多いです。」

――試合間でも行い、終わったあとは長めのフィードバックとたくさん行うのですね。

Awakerさん「ちなみに今シーズンは試合間に1時間フィードバックを行うこともありました。そのため相手チームにはひたすら“Sorry”とチャットを送っていましたね(笑)。」

――1時間ということは相当話すことがあったのですね…。

Awakerさん「もちろん短い時間でフィードバックを行えることが理想的です。しかし選手の中には伝えたいことを伝えたり、考えを言語化したりすることが苦手な選手もいます。ベテラン選手5人が5分で終わる話を20分かけてやってしまう場合も多いです。」

――フィードバックは本当に大変そうです……。

Awakerさん「フィードバックしたいことは無限に出てきます。そしてこの時間が長いと選手たちもストレスを感じてしまうみたいなんですね。しかしこういったことを経験して理解してもらうといったことは意識しています。」

〇客観視と良くない成功体験

――改めてコーチにしか出来ないことってどんなことだと思いますか?

Awakerさん「自分のことを客観視することは、選手本人がどんなに成長しても出来ないことだと思います。そのため、選手が見ることの出来ない部分をきちんと見てあげることがコーチにしかできないことだと思っています。」

――客観視できる人って確かに少ないかもしれません。

Awakerさん「また、良い悪いを結果からではなく、過程で判断できることもコーチだからこそ出来ることなんです。選手は成功したら自分が正しいと考えてしまうのですが、それは良くない成功体験の作り方なんですね。それが本当に成功かどうかは選手自身で気づくことは難しいことです。こうしたことからコーチはチームに欠かせない存在だと考えています。」

――良くない成功体験って具体的にはどういうことでしょうか?

Awakerさん「たとえば、自分たちのチームの構成が、序盤でBOTレーンでキルを取らないと後でキツくなってしまう構成だったとします。しかし選手たちは序盤にTOPレーンでキルを取ってしまい、本人たちもキルを取れて満足しているという状況ですね。」

――本来の作戦とは違うけど、敵を倒せたからいいや!みたいな感じですね。

Awakerさん「要するに問題を問題として認識出来ていないということです。これはよく起こりがちなことなんですよ。そこの間違いを直接伝えようとすると、選手たちのプライドが邪魔して素直に受け取ってくれない選手もいます。でもそこで“この構成って序盤に何をすると強いと思う?”と聞くと、選手たちも納得してくれるんです。」

――選手自身では気づくことのできない部分を見るためにはコーチは欠かせませんね!

〇喧嘩になってもルール厳守!

――ではコーチのお仕事をしていて大変だったことはありますか?

Awakerさん「選手を答えへ導くことが出来るようになるまでは本当に大変でした。最初の頃はコーチングが全くできずひたすらダメ出しをするティーチングがコーチの仕事だと考えていたくらいです。」

――最初は道なき道を進んでいる感じだったのですね。

Awakerさん「しかしDetonatioN FocusMeでコーチ業を行っていたコーチ1年目でティーチングは間違いだということに気が付きました。キッカケは自分よりゲームが上手い選手に指導をすることは無理だと感じたからです。そこで改めてコーチの仕事の意義について考えるようになりました。」

――確かに自分より上手い選手に指導するのは難しそうですね。

Awakerさん「仮に自分が選手よりゲームが上手くても、だったら選手になることが出来るじゃん!って話ですよね。当時はこのままではコーチではないぞという違和感を感じていましたね。」

――方向性に迷う時期もあったのですね。

Awakerさん「そこからはコーチについて調べ始め、今の考え方が出来るようになりました。しかし効果を出せるようになるまでには本当に時間がかかりましたね。選手にはあまり大きな声では言えませんが、今行っていることですら正解かどうか分からないので、正しい道を探すことが一番大変と言えるかもしれません。」

――コーチングって奥が深いのですね。では他には大変だと感じる部分はありますか?

Awakerさん「あとは選手同士で感情的になってヒートアップした際の仲裁も大変です。そうした時に“とりあえず落ち着け!”と言っても落ち着くわけもなく、それをなだめたり話し合いをできる状態に持っていくことは大変なことです。」

――それは大変そうですね……。ちなみに選手同士で言い合いになることは多いのですか?

Awakerさん「限り防ぐようにはしていますね。しかし言い合いを一切なしにしてしまうと、本音で話し合いづらい関係になってしまいます。なので言い合いはない方が望ましいけれど、やるのだったら正しく感情をぶつけあってほしいなという考えがあります。」

――確かに建前で話し合うよりも本音で話し合った方がチームとしてもいいですよね。

Awakerさん「そこで私はチーム活動を始めて最初に、話し合いのルールを説明するようにしています。自分の意見を言いたい時はまず意見を言いたいと伝えること、意見を言いたい時はまず相手の話を全部聞いてから自分の意見をいうこと、などこういったルールをどこのチームでも話しています。それを説明するとしないで話し合いのしやすさは変わるのかなと思います。」

――ルール作りは大事そうです!

Awakerさん「それらのルールを設定していなかった時代は本当に地獄でした(笑)。ひたすらなだめていましたね(笑)。」

――そういったこともあってルールを作ったのですね。

Awakerさん「あとは受け取り手側も、相手の伝えたいことを理解しようとする気持ちを持とうねと伝えています。結構ありがちなのは、相手が自分に何かを伝えているときに、反論の内容だけ考えてしまうみたいなことですね」

――確かにヒートアップしているとそうなりがちですね。

Awakerさん「そうではなく、言っていることを理解しようという気持ちで話を聞こうねということは伝えています。それでも納得いかなかったら反論はしていいけど、きちんと理解する努力をするように話していました。」

前編はここまで!人に教えることがコーチのお仕事だと思っていましたが、今回のお話を聞いてコーチングの大切さがよく分かったのではないでしょうか。次回の後編では実際のお仕事の様子や、コーチになるために必要なことを聞いちゃいます。次回もお楽しみに☆

▼AwakerさんTwitter(@Awakerlol)
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