eスポーツプロフェッショナルVol.1 Japanese小池さんに聞く『データアナリスト』という仕事【前編】
ビデオゲームを競技、いわゆる“eスポーツ”として盛り上げていこうという風潮がますます強まってきています。そんな中、eスポーツを活性化させるため、今も様々な場所・方法で活躍している人たちはたくさん存在するのです。
しかし、eスポーツに関わる仕事って一体どんなものがあるのでしょうか?そこで今回はeスポーツを盛り上げようと頑張る様々な分野の人たちにお話を伺う、「eスポーツプロフェッショナル」なる連載を開始!プロ選手はもちろん、eスポーツを陰影で支える人たちの仕事に密着し、その仕事の魅力ややりがい、どうやったらなることが出来るのか等、たくさん聞いちゃいます!
記念すべき第1回はeスポーツチームを支える『データアナリスト』です。チームが強くなるために必要なデータを集め、勝利に貢献するとうざっくりとしたイメージはあるものの、一体どんなことをしているのでしょうか。今回はよしもとゲーミング所属で、ZETA DIVISIONの Call of Duty部門で活躍するデータアナリスト、Japanese小池さんにインタビューを行いました。具体的な仕事内容ややりがいなど、よしもとゲーミングのゲーミングハウスにてたくさんお話を伺いました。それでは早速お写真と共に取材内容をお届けします☆(取材日:2022.2.18)
〇Japanese小池さん
よしもとゲーミング所属。『Call of Duty』シリーズに精通しており、シリーズを通して何度も世界ランカーになるほどの腕前を誇る。またeスポーツシーンではデータアナリストとして活躍しており、チームを公式大会無敗の11連勝という記録へ導いた。現在はZETA DIVISIONのCall of Duty部門のデータアナリストとして活躍中。
〇データアナリストってなんだ?
――本日はよろしくお願いします!早速ですが、Japanese小池さんが行っているデータアナリストってどんなことをする仕事なのですか?
Japanese小池さん「ざっくりいうと、チームを勝利へ導くことが仕事となります。具体的にはスクリムや交流戦での記録をとって、ポイントの推移やチームメンバーと相手チームのキルデス比を計算します。そしてここは強い、ここでは弱いということを数字やグラフで出して、そこを選手たちに話してもらいます。」
――選手たちの試合を記録する仕事なんですか?
Japanese小池さん「簡単に言うならば、データを取って反省会の議題を作るって感じですね。」
――データを提示して選手やコーチたちの反省会をサポートしているのですね。
Japanese小池さん「データがなければ負けた時の原因も分からないし、かといって試合中にそれを把握することも難しいですよね。だから試合中の問題を数字で出すことによって、議題を作るというわけです。」
――プレイしているだけでは気づけないところをデータにして、選手たちを支えているのですね。
Japanese小池さん「特に試合の時は、マップごとの勝率が大事だと思っています。本番の試合ではコイントスでプレイするマップを選択するのですが、そこでマップをBAN(選択肢を不可にする)することができるため、苦手なマップは避けることができるんです。なので大会前はそのマップの練習時間を省けば、得意なマップを伸ばすことができますよね。」
――確かに苦手なマップより、勝率の高いマップを選びたいですね。
Japanese小池さん「その時選手に『どこのマップが苦手だと感じる?』って聞くんですけど、選手たちが苦手・得意だと思っているマップって、データとは99%違うんですよね。それくらいプレイヤーの感覚と数字ってズレているんです。」
――プロ選手ですらそんなことがあるのですか?!
Japanese小池さん「毎日反省会していても、どこが得意か、どれだけ勝っているかに関しては数値と感覚は全く違います。むしろ合っていたことは一度もないくらいです。そのときはデータアナリストをやっていて良かったなと思います。」
〇プロ選手ではなく、データアナリストになった理由とは
――Japanese小池さんがデータアナリストになった経緯を教えてください!
Japanese小池さん「2017年の11~12月によしもとゲーミングが立ち上がったとき、CoDのチームを作るということになったんです。僕自身もCoDは世界ランカーになるくらいやりこんでいたといこともあり、よしもとの方からプロ選手になってほしいとのお誘いがありました。」
ーー最初はプロ選手として誘われたのですね。
Japanese小池さん「でも当時僕は27歳で、周りの風潮的にもFPSは10代~20代前半のプロ選手が多かったこともあり、その件はお断りしました。でも何か力になりたいなと思い、選手の紹介や野球でいうスコアラーのようなことをして、結果的にデータアナリストになったんです。」
――コーチになるという選択肢はなかったのですか?
Japanese小池さん「その選択肢ももちろん考えましたが、プロ1年目の人たちに技術的なことは教えられる人はまだ日本にないなと思ったんです。むしろこの子たちが教える立場になると思っていたので。また客観的に試合を見ていればいくらでも選手に指摘はできますよね。しかしそんなことは誰にでも分かることで、自分が言ったところで説得力がないなと思ったんです。だからこそ数字やグラフなどのデータをもとにチームを支えようと決心しました。」
〇データアナリストの苦労とは
――Japanese小池さんはデータをどのようにして集めるのですか?
Japanese小池さん「僕はリアルタイムで試合の映像を見ながら、1日何時間もかけて、スプレッドシートにポイントの推移を記録しています。」
――リアルタイムで入力とは忙しいそうですね
Japanese小池さん「ただ僕も別の仕事があるので、試合が見れないときはその後に録画を見て入力することもありますね。」
――他に何か試合中に見ていることはありますか?
Japanese小池さん「数字を打ち込みながらなので、全部を詳しく見られているとはいえません。ただ、誰の動きでリスポーン(※)など、試合の動きが変わったのか選手たちに聞かれることはありますね。」
(※)『ゲーマーゲーマー』の姉妹サイト『ゲーマーゲーマー’sPOST』ではeスポーツ用語の解説やコラム記事を掲載しています!
▼【保存版】eスポーツ用語『リスポーン』とはどんな意味?
https://post.gamer2.jp/respawn/
――試合を客観的に見ているからこそ、アドバイスを求められるのですね。
Japanese小池さん「チームのリーダーにはよく『リスポーン位置が変わったのって敵が抜けてました?(敵が自チームの陣地に侵入してきましたか?)』って聞かれます。かといって試合の映像をずっと見ていると数値の入力ができないので、そこには正直困っています。でも選手が試合中に気づけないところをなるべく見ようとは意識しています。」
――それは大変ですね。
Japanese小池さん「後で選手たちが録画を見直すときに分かればいいのですが、今すぐ答えを知りたい場合が選手たちにはあるんです。少しでも早く発見できるために意識はしていますね。」
――データ入力に必要なことと選手たちが求めるものを両方見なくてはいけないのは忙しいですね。
Japanese小池さん「本当に大変です。僕の場合、試合のスコアを全て記録したら、自分で録画していたものを止めて、YouTubeチャンネルの録画を溜めた再生リストにマップごとのタイトルと試合結果を書いてアップロードするんです。」
――その仕事量を1試合ずつ行うとは想像できないです……。
Japanese小池さん「もちろん選手たちは僕の仕事は見えていないので、どんどん次の試合に行ってしまうんです。でも僕は上記の作業をやっているので、次の試合が始まってしまうんですよ。だから試合が終わった後が一番大変ですね。トイレにも行けないんです(笑)。お腹痛くなったら選手たちに言ってから行くんですけど、あとで大変な思いをするのは自分です(笑)。」
――裏ではこのような苦労があったのですね
Japanese小池さん「もちろん選手たちの方が絶対に大変なので、選手たちのことをは本当にリスペクトしています。」
――データアナリストはまさに縁の下の力持ちですね。
〇どんなデータを取っているの?
――実際のお仕事では具体的にどのようなデータを取っているのですか?
Japanese小池さん「試合中に取っているデータは日付、試合時のマップ、両チームのプレイヤー名、試合終了時の得点、キルデス比などのデータを取っています。試合中の得点に関してはハードポイント(※)ということもあり、1分ごとに入力しています。」
(※)ハードポイント
1分ごとに場所が変わっていく拠点(ハードポイント)を確保し、より多くの確保ポイントの獲得を目指すゲームモード。
――結構多いですね~。
Japanese小池さん「入力した情報は自動でグラフ化するようにしてあるのでリアルタイムで入力さえしていれば、すぐに試合全体の流れがわかるような仕組みになっています。なので試合中はこれをずっとやっていますね。」
――ゲームモードによって入力するデータや、見るポイントは変わるのですか?
Japanese小池さん「もちろんモードによっても変わるのですが、特にサーチ&デストロイは作戦がとても重要なため、データや戦術はお見せすることができません。『VALORANT』や『Rainbow Six Siege』も交流戦は配信していないように、設置系のルールは作戦がバレると破綻してしまうのです。」
(※)サーチ&デストロイ
『VALORANT』や『Counter-Strike: Global Offensive』、『Rainbow Six Siege』 など、様々なFPSタイトルで採用されている人気モード。『爆破系FPS』と呼ばれること多いが、CoDでは『サーチ&デストロイ』という名称になっている。ルールは攻守に分かれて行うゲームモードで、攻撃側はA、Bの2か所のどちらかに爆弾を設置し爆破、もしくは敵チームの全滅で勝利となる。防衛側は時間切れまでにA、Bの2か所を守り切る、もしくは敵チームの全滅で勝利となる。サーチ&デストロイはリスポーン(試合中の復活)がないため各自慎重に動く必要があり、他のゲームモードと比べて戦術性が非常に高い。
――サーチ&デストロイはデータも含め㊙なんですね。ちなみにデータを元に選手で話合うという、小池さん自身がアドバイスをすることはほとんどないのですか?
Japanese小池さん「たまにあります。例えばチーム全体の動きとしては言えるのですが、僕の場合は断定ではなく、提案するように心がけています。あとは褒めることが多いですね。」
――監督というよりはアドバイザーに近いのですね。
Japanese小池さん「そうですね。よく周りからは『監督じゃないの?』言われることもあるのですが、そんな偉そうな肩書きではありません。」
さてJapanese小池さんのインタビュー前半はここまでとなります。皆さんもデータアナリストというお仕事が少し分かったのではないでしょうか。近日公開予定の後編では実際のお仕事の様子や、データアナリストになるために必要なことなどを聞いちゃいましたのでお楽しみに☆
4/13 後編を公開しました!(https://gamer2.jp/10373/)
▼Japanese小池さんTwitter(@japanese_koike)
https://twitter.com/japanese_koike
▼Japanese小池さんYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCkUPiYxhHMu5xUh0tTxRtxA
▼よしもとゲーミング YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCXh8M0mhSjZ5wb5JMdWmYLA