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「REJECTが持つeスポーツ業界を変える”思想”とは」REJECT甲山翔也社長インタビュー

今回私たちが取材したのプロeスポーツチーム「REJECT」(リジェクト)を運営する株式会社REJECTの甲山翔也社長です。REJECTは『Apex Legends』や『VALORANT』、『Rainbow Six Siege』など主にシューター系タイトルのチームを数多く保有するプロゲーミングチームです。

また甲山社長はプロeスポーツ選手としての活躍経験もあり、大学在学中に起業して社長を務めているという異色の経歴の持ち主なんですよ!一体どういった経緯でREJECTの社長になり、どのような考えをお持ちの方なのかが気になってきますね。

またREJECTは他のプロゲーミングチームとは一線を画す活動を行っているチームとしても知られています。ファッションブランドや、ゲーミングオフィス「REJECT GAMING BASE」の設立、選手のコンディショニングなど、取材を通して色々聞いちゃいました!それではお写真と共に取材内容をお届けします☆(取材日時:2021年11月5日)

〇プロ選手、大学生、社長を経験して大変だったこととは

――本日はよろしくお願いいたします!まずは甲山社長ご自身についてお伺いします。甲山社長はプロ選手として活動されていたそうですね。

甲山社長「『カウンターストライク』をずっとやっていて、『カウンターストライクオンライン2(CSO2)』では3回開催されたオフライン大会のうち2回優勝したことがあります。」

――ものすごく強いじゃないですか!

甲山社長「その後は『PUBG:BATTLEGROUNDS』のプロとして誘われて、僕が選手を集めてチーム作りをしたんですが、契約していたオーナーさんに逃げられてしまったんですよ。」

――プロとして活動しているときにオーナーさんに逃げられるというのは辛いですね。

甲山社長「当時はゲームで食べていくことが難しいということは分かっていて、ある意味名誉のために戦っていました。それでようやくプロになれたと思ったらオーナーさんに逃げられたって感じです。」

――現在はREJECTの社長でありながら大学生でもあるとのことですが、色々同時に進行していて何か苦労することはありますか?

甲山社長「毎日が大変です。僕は数字を追っていく仕事というよりも、ファンの方々や選手、スタッフの心を動かすために何をやるべきか考えることが多く、これに多く時間を割いています。」

――“心を動かす”とは具体的にどういったことでしょうか?

甲山社長「いわゆるゼネラルマネージャーみたいな仕事もしているので、選手のマネジメントに一番力をいれていますね。ただそれだけをやっていると会社が成り立たないので、株主と定期的なコミュニケーションを取ったり、経営的な面にもしっかり時間をかけています。僕自身こういった経験値は低いので、とても大変だと感じることが多いです。」

――経営面でのやりくりが大変なのですね。

甲山社長「普通億単位の資金調達を行う会社はそういった知識が豊富な経営者が多いと思います。しかし学生だった自分がeスポーツが好きで始めた会社なので、経営面の知識や経験が足りないと感じることが多くあります。そこの経験値を埋めるための目には見えない作業が多く、それらの積み重ねがしんどいと感じるのかもしれません。」

甲山社長は気さくな方で、自ら“ろくろポーズ”を提案して撮影にご協力してくださいました(笑)。

〇現役大学生が“社長”になったキッカケ

――甲山社長はREJECTをゼロから始めたとのことですが、何か大学で経営等の勉強はされていたのでしょうか?

甲山社長「大学では経済学部に入っています。これは僕の実家がプラスチックの加工工場を営んでいて、そのあとを継ぐための勉強をするという理由で入りました。」

――元は実家の会社を継ぐために大学で経営の勉強をされていたのですね。

甲山社長「ただ大学に入ってみたら、理想と現実のギャップに苦しみました。大学はみんなが真面目に勉強しているイメージがあったのですが、実際はそうでもなくここにいたら腐ってしまうと感じるほどでした。」

――それでご自分で勉強を始めたのですか?

甲山社長「そこからはブログでビジネスを始めたり、ビジネスコンテストに出場したりと、自ら積極的に行動していました。卒業後は実家を継ぐつもりだったので、卒業までに何かスキルを身に着けたい!という思いがありましたね。あとはずっと好きだったゲームに真剣に取り組む最後のチャンスだとも思っていたので、ゲームもずっとプレイしていました。そしたら結構いい線まで行けたんです。」

――そしてオーナーさんに逃げられたのですね。

甲山社長「オーナーさんに逃げられてからは、チーム運営費を捻出するためにWEB制作請負をするというギリギリの生活を送っていました。」

――甲山社長は在学期間中に相当下積みをされていたのですね。

甲山社長「「頑張って本を読んだとか、交流会に顔を出したとかそんな程度ですけどね。むしろ周りからしたら僕の方が腐っていたと思われてたかもしれません。ただ周りには悪いことを吹き込んでくる人がたくさんいて、本当にうんざりしていました。だからこそ早く実力を付けようとしていたんです!」

GAMING BASEのロビーには、たくさんのトロフィーや記念品が!中には甲山社長のご実家で作られたものもあるそうですよ。

〇ゲーム=ダサいはもう古い

――REJECTさんはREJECT GAMING BASEの設立やファッションブランドなど、ゲームの印象とはかけ離れたことに注力しているイメージがあります。これにはどのような意図があるのでしょうか?

甲山社長「eスポーツ業界の汚い部分を改善したいという思いと、あまりに芋くさい部分をかえたいと思って始めました。eスポーツは外部からきらびやかな世界だと感じてもらえないと、魅力を伝えることは難しいと思っています。」

――REJECTさんは悪い意味でのゲームっぽさがないというか、本当に一線を画したことをやっていますね!

甲山社長「あまりにゲーマー色を出しすぎることは良くないと思っています。またこういったことは僕たちよりも大きなチームにも、どんどんやってほしいと思っています。」

――まさにパイオニアですね。

甲山社長「あと今は割と認められてきていますが、プロ選手がかっこいい存在だと思われない時期が長かったですよね。だからREJECTではファッションに気をつかうとか、ユニフォームで出る際は靴まで揃えるとか、そんなことを気にしていました。」

――確かにREJECTさんはユニフォームにも気を使っていますよね。やはりカッコいいプロゲーマーを輩出したいという気持ちは強いのですか?

甲山社長「例えば日本で一番強いプロゲーマーが服装とか見た目に全く気を使っていなかったら、メディアも取り上げづらいと思うんです。それが一流のタレントさんみたいなかっこいい服装をしていたら、周りの人にも注目してもらえますよね。」

――本気でこれからのeスポーツ業界を考えると確かにその通りです。

甲山社長「またそういうことを選手に言っていかないと、選手が自分から挑戦できないと思います。やはりゲーマーって『ゲーマーだからこれはやってはいけない』と感じてしまうことって多いと思うんです。だからこそあえて身の丈に合わないことをするというのは、ゲーマーを含めた今の若者には必要なことなんです。」

――異なる環境に身を置くことで、成長できるということですね。

甲山社長「だから僕たちはあえてカッコいいものを作ろうとか、オシャレなゲーミングベースを作ろうと考えて実行しているんです。そのような活動をしていれば、選手たちも自ずとそういう存在になっていくと思います。自然と変化していける環境をつくることがこのeスポ―ツ業界には必要なんです。」

――若者が自然に変化できる環境づくりをしていくということですね。確かにそうなればeスポーツからスター選手が登場することもありえますね。

甲山社長「スター選手が生まれるっていうことは本当にこの業界にとって大切なことだと思います。なので僕たちが行っているサポートは、メンタルトレーニングや栄養管理、アナウンサーの方を呼んで行うトークレッスンなど、表に立った時に必要な準備をたくさんしているんです。自分たちが力を入れている部門からスター選手を生み出そうという思想の下で全て行っていることなんです。」

取材日(2021年11月)にはPUBG MOBILEのアカデミーチームが練習に来ていました。

〇“思想”を込めて売るとは?

――先ほどもお話に挙がったように、REJECTさんはアパレル部門も展開していますよね。アパレル部門にはどういった意図があって進出したのでしょうか?

甲山社長「自分たちをカッコいい組織にするには、自身でブランドを作った方が良いなと思いまして。以前にもアパレル進出しようとして、質とデザインを良くすれば売れると考えたのですが、実際に完成したものは理想とはかけ離れた質の悪いものでした。それを販売するわけにもいかなかったので、結局は大量の在庫を抱えてしまいました(笑)。」

――質の悪いものは販売しないという強い信念があっての行動ですね。また今のREJECTのアパレル商品はどれもカッコよくて、とてもシンプルですよね。アパレルのデザインには何か意図はあるのでしょうか?

甲山社長「深い意図はなくて、単に外で着てもオシャレなものを作りました。ただこれから派手なものは一切作らないというわけではなく、まずは挑戦の第一歩としてシンプルにオシャレなものを作ったのです。」

――ちなみにどんなものが人気なんですか?

甲山社長「アパレルからはちょっと外れますが、グッズ類がすごく人気です。あとはこの前の『PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE』の優勝記念で販売した限定フーディ―も即完売でしたね。とにかく僕たちはREJECTの思想を込めたものが売りたいと思っているので、お金をかけるだけで作れるものは価値がないと考えています。これからもREJECTでは僕たちの思想が込められた商品を販売していきたいですね。」

〇選手寿命はまやかし?30代を越えても活躍する選手

――次はプロ選手のセカンドキャリアについてもお聞きしたいと思います。eスポーツは選手寿命が短いと言われていますが甲山社長は選手寿命はどのくらいだと考えていますか?

甲山社長「個人的な感覚では、35歳くらいだと思います。10年前にプロだった人は食べ口がなかったので仕方なく辞めていっただけだと思っています。」

――体の衰えではなく、ただ単にプロとして活動していくには経済的に厳しいだけということですか?

甲山社長「その通りです。実際にREJECTには34歳の選手もいて、大活躍しています。だから選手寿命はそんなに気にするものでもないと思っていまして。確かに瞬発力などは低下しますが、年長の選手はそれをカバーする経験値を積んできているんです。ただゲームを仕事としてやっていくことができなくて、別のところへ行ってしまっただけなんですよ。だから選手寿命が短いなんてまやかしだと考えています。」

――確かに格闘ゲームのプロでも40歳を超えている選手がいることを考えると、同じような瞬発力を求められるFPSも同じですよね。ではもしプロ選手が選手活動を引退したとき、REJECTではどのようなサポートを想定しているのですか?

甲山社長「REJECTに所属する選手はeスポーツにおいて何かを本気で成し遂げたいと思っている人たちです。強い思いがないとここにはいないと思うので、もし彼らがREJECTで働きたいとなったら、アナリスト業務や広報業務など自分たちの経験を活かせることをやってほしいと考えています。あとは選手に寄り添うことのできるマネージャーなども向いていると思います。」

――REJECTはセカンドキャリアもきちんと見据えているのですね。

甲山社長「ただ選手たちにはできるだけ長く選手でいてほしいので、会社で働こうとするな!と言っています(笑)。それは自分も同じで、プロ選手に戻れるのだったら戻りたいですね。むしろREJECTの選手になりたいです。そうしたらREJECTはさらに強くなっていたと思いますね(笑)。」

こちらも甲山社長自らご提案してくださった“それっぽいポーズ”。ありがとうございます!

〇ポジティブなことを続けたい

――REJECTでは選手のコンディショニングにも力を入れているそうですね。特に食事を管理・調理する専属の栄養士がいるとのことですが、REJECTの選手全員は栄養士さんの作った食事をとられているのでしょうか?

甲山社長「『REJECT GAMING BASE』に通って練習している選手は必ず食べています。こうして栄養管理に気を付けているのも、eスポーツが悪だと思われたくないからです。eスポーツに本気で取り組んだから不健康になった、eスポーツ選手だからマイナスなイメージを持たれたなんてことはあってはいけないと考えています。」

――eスポーツ=不健康というイメージを払拭するためにこうした栄養管理を始めたのですね。

甲山社長「健康的で栄養に偏りのない食事はもちろん、精神衛生が安定するように休憩時間もきちんと確保しています。またREJECTの選手は昼夜逆転の生活は送っていません。とにかくeスポーツ業界に対してポジティブなことをやり続けたいと思っています。」

〇“本気”で取り組む覚悟はあるか

――最後に甲山社長から読者へ向けて、eスポーツ事業にはどんな人が向いているかについてのコメントをお願いします!

甲山社長「これはタイミングの問題だと思っていて、若い人はこれから事業のオーナーになりにくいと思います。これまでは誰でも参入しやすい業界だったのですが、今ではどんどん整備が進んできています。」

―よくも悪くも整備が進んだことで、事業のオーナーを志す若い方が段々と参入しづらくなってきているのですね。

甲山社長「やりたいと思ったときに本気で行動できるかが重要です。そこに本気になれた人たちがプロ選手になったり、オーナーになったりしているんです。好きなものを追求したら怖いものは何もない、とにかく挑戦することが大切です。」

――本気で取り組む覚悟が必要なのですね。

甲山社長「でも若い人はチャンスがたくさん貰えると思います。そのチャンスをものにしたり、飛びこめるように準備しておいたりすることも必要です。ただ中途半端な覚悟なら後々しんどくなるだけなので、そうだったらやめた方がいいですね。」

―――チャンスはいつくるか分からないからこそ、きちんと準備と覚悟をしておくことが大切なんですね。

甲山社長「何か新しいことに挑戦するっていうことは、すごくしんどい判断を何度も行わないといけないし、やがて同じ志を持っている人たちも消えていきます。そこで周りの人たちがいなくなる前提で考えられることも必要です。自分が目指す場所が高いほど周りに若い人たちがいなくなって、代わりに同じ志をもつ年齢の高い方たちとの繋がりができます。そこにちゃんと乗っかっていけるかどうかがですね。」

――本日はありがとうございました!

甲山社長の取材を通して、REJECTがどのような思想のもとに活動しているのかが良く分かったのではないでしょうか。今はeスポーツが急成長している中だからこそ、ネガティブなことではなくポジティブなことを通して、業界の未来のために活動していきたいという強い思いを感じることができました。ファッションブランドの設立や選手のコンディショニングをはじめ、これからもREJECTがどんなことに挑戦していくかが気になりますね!

私たちゲーマーゲーマーはeスポーツに携わる素敵な方たちをこれからも取材していきます!次回もお楽しみに☆

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