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《第5回》毛見誓也のコレで良いのか!? 日本のeスポーツ「eスポーツ”観戦”に物申す!」【連載全6回】

◆ 毛見誓也
洋ゲー、映画、自販機巡りが好きな高校生ゲームライター。ゲームを仕事にしたくてゲームクリエイターを目指すも、プログラミングと3DCGを学校で学びつつ同級生とのレベル差に悩み挫折を味わう。そんななかゲームライターという仕事を知り、海外ゲームのレビューや攻略ブログの運営をスタート。より多くの人に「面白い!!」と思ってもらえるような記事執筆を目指し日々邁進中。
◇洋ゲーのレビューや攻略、ニュースなどを紹介/げーむのはらわた

ゲームといえば自分でキャラクターなどを操作して遊ぶもの。今までゲームは自分でプレイするのが基本的な遊び方でした。しかしYoutubeやTwitchなどの動画配信サービスの普及によってゲーム実況などの人気が爆発し、他人のゲームプレイを見て楽しむ”視聴勢”が徐々に増えてきています。この記事を読んでいる皆さんの中にもYouTubeなどでゲーム実況を見ている方もいるのではないでしょうか。

実はeスポーツ業界でも同じようなことが起きています。KADOKAWA Game Linkageの調査(コチラ)によると、動画視聴や試合観戦をするeスポーツファンたちは2019年時点で483万人いるとのことです。さらに2019年以降は大会数の増加や5G回線の普及の影響も含めて右肩上がりに増える見込みです。

ゲームはプレイするだけでなくスポーツと同じように見て楽しむ時代が来ているわけですね。実際に野球やサッカーなどのスポーツも観戦だけする“観戦勢”がいるので、eスポーツにこのような流れが来るのは当然でしょう。

僕はゲーム実況とかは見ないのですが、FPSゲームの大会などはネット配信などで結構見ます。プロ同士の戦いや神プレイの数々は見ているだけでも楽しいです。

ですがFPS(特にルールが複雑なもの)やMOBAなどのゲーム観戦は、体を動かすスポーツの大会と比べるといまいち魅力に劣ると感じるのがぼくの本音です。大会の規模や運動系スポーツと比べて迫力に欠けるのも要因の1つですが、なにより1番の問題は「非常にわかりづらい」という点です。

■ ゲームは”ぱっと見”ではわからない

バスケのルールは非常に単純で、シュートを決めて得点を稼ぐ・ディフェンスをして敵の得点を防ぐという簡単なものです。トラベリングや24秒ルールといった細かいルールはありますが、基本的なルールさえわかれば試合の流れを理解することが可能です。

また、バスケは見るだけで凄さが伝わってきます。例えば豪快なダンクシュートやロングレンジの3ポイントシュート、激しい身体接触が起きるゴール下の攻防など。迫力のあるプレイの数々は見る人を圧倒します。これはバスケに限った話ではなく、サッカーや野球などの体を使ったスポーツでも同じですよね。このような体を使ったスポーツには視覚的・直観的に楽しめる要素が詰まっているため、経験者から未経験者まで多くの人たちが試合観戦を楽しめるのです。

しかし、ゲームの場合は話が違ってきます。ゲームはスポーツと違い、ルールが非常に複雑なのです。そのため直観的に観戦を楽しむのはなかなか難しいのが現状です。

最近流行りのゲーム「ApexLegends」を例に挙げます。ルールは基本的なバトロワと同じで、島に降り立ったプレイヤーが最後の1チームになるまで戦うというシンプルなもの。しかし、それらのルールを知っているだけでは試合の流れをつかむのは難しいでしょう。

なぜならApexにはそれぞれ異なる能力を持ったキャラクター”レジェンド”が登場するからです。レジェンドの能力はどれも必殺技、すなわち戦況を大きく覆すためこれを知らないことには試合展開をつかめません。さらにはボディシールドやそれを回復させるシールドセルなどの効果や性能を把握しないとゲーム中に何が起きたのか理解することは難しいです。またスポーツは決まった競技場で試合を行いますが、ゲームは試合ごとにステージを変えることもしばしばあります。なのでステージごとの特徴も知っておく必要があるなど、とにかく知っておくべきことが多すぎるのです。

ではゲームの視覚的部分はどうでしょうか。プロ選手の的確なエイムやキャラクターコントロールには目を引かれること必須だと思います。しかし、eスポーツはマインドスポーツと呼ばれるほどに頭脳戦が大半を占める競技です。立ち回りや状況判断などといった頭脳戦を読み解くためにはゲームの知識が必須となります。将棋のルールを知らない人が将棋の対戦を見ていても楽しくないのと同じですね。

そのため最近のeスポーツ大会には実況者や解説者が付くケースが多いです。主にプロ選手やゲーム実況者などが務める場合が多いのですが、中にはeスポーツ専門のアナウンサーもいるほど。そのくらいeスポーツ大会には欠かせない存在と言えるでしょう。

しかし、解説者の仕事はあくまで試合を詳しく解説することです。ゲーム経験者からしたらこれほどありがたい解説はありません。ですが刻一刻と変わる状況を説明されたところでなにも知らない初心者の方は理解するどころか混乱してしまうと思います。

将棋にも同じでしょう。将棋は頭を使う対戦ゲーム、すなわちマインドスポーツの1種です。何も知らずに将棋の試合を見ていても絶対に面白くないと思います。そのため、楽しんで見るためには将棋のルールを深く理解することが大事です。

また将棋のテレビ番組などでは解説者がいますよね。しかし解説者の解説は試合展開について言及しているため、素人がきいたところでなにが起きているかはわかるはずもありません。

eスポーツは将棋と同じマインドスポーツです。そのためゲームをプレイしたことない人たちが試合を視覚的・直観的に楽しむのは難しいといえます

■ ラグビーの”にわかファン”

ルールの複雑さや必要な知識の量など、非ゲーマーにとってeスポーツの観戦は敷居が高すぎます。しかし、それは2019年に日本でワールドカップが開催されたラグビーも同じだったのです。

難しい、ルールがよくわからないといった理由から、ラグビーは日本ではあまりなじみのない競技として扱われてきました。しかし、ラグビーワールドカップ2019のチケットは99%が売れ、TVの視聴率は40%を超えるほどに盛り上がったのです。

なぜそこまで盛り上がったかというと、ラグビーを全く知らないけど観戦をする”にわかファン”が急増したからです。このにわかファンたちはラグビーの競技性よりも、迫力満点のタックルや個性豊かな選手、そして彼らの戦う姿を一目見ようと観戦していました。そして2019年の流行語には「笑わない男」や「にわかファン」、大賞には「ONE TEAM」が選ばれるくらい日本中にラグビーブームを巻き起こしたのです。

本来にわかファンというのは、世間の盛り上がりに乗じているだけでそのコンテンツの対する知識がない人たちの俗称として使われているものです。しかし、ラグビー解説者が「にわかファンがたくさん生まれて嬉しい」と言っていたようにラグビー業界はにわかファンを温かく迎え入れました。この姿勢が日本のラグビーを盛り上げたといえるでしょう。

■ eスポーツ業界は観戦に力をいれるべき!

現状のeスポーツ観戦はルールを知った一部の人たちしか楽しめないものです。しかし、これからより一層eスポーツ観戦を盛り上げるには、誰でも楽しめる環境をつくる必要があるでしょう。

そのためにもまずはゲームの競技性より、チームや選手の魅力を発信していくことが重要だと考えます。それらがキッカケで”にわかファン”が生まれるかもしれません。

またチームや選手のファンを増やすことで、グッズやチケットの売り上げ増加にもつながります。それらの収益が増えることでeスポーツ市場規模の拡大にも繫がるのです。それだけではなく、観戦を通じてより深くゲームのことを知ってくれる人が増加するかもしれません。

現状のeスポーツはまだまだ内輪で盛り上がっているように感じます。しかし、この楽しさや興奮をゲーマー内だけで終わらせるにはもったいないです!にわかファンたちでも楽しめるような環境を構築することで、よりeスポーツは盛り上がっていくことでしょう!!(第5/6回 完)

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