《金曜連載/第3回》17歳でプロeスポーツチームの代表になった僕は人生の軌跡に何を思うのか。「僕が“黒まめ”になったわけ~高校生 前編~」【全16回】
◆ 永田 大和
宮崎県を拠点に活動するマルチプロゲーミングチーム「Fiveness Esports」の代表。”黒まめ”の愛称で親しまれ、高校3年生だった2020年1月にはレインボーシックスシージのトーナメント大会「Fiveness JapanCUP」を主催し成功を収めた。”現役男子高校生が1人で、400人以上が出場したeスポーツの大会を開いた話。”などnoteでも自身の体験を発信し注目を集めている。
こんにちは、黒まめこと永田大和です。
やっときました高校生編、ここからがっつりeスポーツがでてきます…お待たせしました!
1.告白
一世一代の大イベント、そうそれは…高校生活におけるクラスメイトへの自己紹介。
その自己紹介でクラスの中での立ち位置や、印象が決まってしまうわけですから、それはもう重大イベントです。
そんな重大イベントで私は告白をしました。
中学時代のことを語ったのです。
学校に行っていなかったこと、勉強が出来ないから、この学科を選んだこと、それでも学校に来てよかったと思ったこと。そして、みんなと仲良くなりたいこと。
結構真剣に自己紹介しました。
その選択が功を奏したのか、仲のいい友人達に恵まれました。
虐めや嫌がらせに発展することもなく、今思い返しても素晴らしいクラスメイト達だったと思います。
先に伝えておく。というのが本当に大事なんだなと意識したのはその出来事がきっかけです。クラスメイト達はきっと、なぜ内部進学者がいるんだ?という疑問を持っていたと思います。
その疑問を一気に解消できたことも良かったし、学校に行っていなかった。という負い目、コンプレックスを先に見せることで、クラスメイト達と対等になれた気がしました。
自己紹介ってそういうものだと思うんです。
自分の全てを見せて、大丈夫だよ。危険はないよ、仲良くなりたいんだよ。という姿勢を示す。
それこそが、自分も、相手も、気持ちの良い関係性を築くための重要な要素だと思います。
2.そりゃそうだよね
正直言って、私は自堕落でした。
中学校時代の生活リズムが抜けきっていなかったんですね。
相変わらずゲームはしていたし、昼夜逆転気味でした。最初から諦めていたんだと思います。
自分は学校に行っていなかったから勉強ができないし、授業を聞いてもわかるはずがない。と。
その結果、テストは赤点こそ回避していたものの、成績はクラスの下から数えたほうが早い状態。かつ、部活も週一なので、勉強にも部活にも真剣に打ち込まず、バイトもせず、速攻家に帰ってゲームをする日々。
青春を謳歌すべき高校生とは思えないような生活を送っていました。
そんな僕に転機が訪れたのは、1年生の夏休み明けだったと思います。
クラスの中から、生徒会役員に立候補する男の子が現れたのです、ここではA君とします。思えば、彼が僕の意識を変えるきっかけになった人物だったのでしょう。
私の、絶対に忘れられない激動の青春大謳歌高校生活が始まります。
3.激動の序章
ある日、学級委員長と共に担任の先生に呼び出されました。
何かやらかしたかな?と思いながら先生の元に行くと、そこにはA君がいました。
これといってクラスの中で目立つ存在でもなく、グループ的な物にも所属していない地味な男子生徒、喋ったことも数える程でした。
おかしな組み合わせだなぁ、なんて呑気に考えていると、先生が一言。
「A、生徒会役員に立候補するから、お前ら演説してくれ」
?
頭の上にクエスチョンマークが出ました、絶対出てました。
委員長はともかく、なんで私なんだ?
うちの学校は、立候補するためには1名の応援演説者、1名の推薦者が必須でした。なんともボッチに厳しい仕様ですね。
生徒会選挙は全校生徒、全教員を集めて、2時間程度の時間をかけて行われます。
まず推薦者が一言で推薦の意思表明、そして応援演説者が30秒~1分程度で応援演説、立候補者が3分程度で演説。といった流れです。
全校生徒の前で演説なんて、引きこもりの不登校だった私には荷が重すぎたので、最初は断ろうと思ったのですが、先生の圧に耐えかねて渋々了承することに。
セリフの多い応援演説者は絶対嫌なので、その役は委員長に押しつけてセリフの少ない推薦者になりました。
そこからは速攻家に帰っていた放課後を使い、演説の文章を一緒に考えたり、練習をしたりしていました。
最初は面倒だったのですが、やってみると案外面白い物で、これまで誰かに必要とされる。という経験に乏しかった私は、必要とされることに喜んでいました。
これまでやってきた小学校時代のリーダーや委員会、中学校の文化祭の劇などは、あくまで自分からやったもので、誰かから必要とされていたわけではないので、凄く新鮮だったんですよね。
そして選挙当日。
全校生徒900名の前に立ち、自分のセリフを言うのはとても緊張しました。
私の中学時代の同級生、先輩がよく見えたのを覚えています、羞恥心でいっぱいいっぱいになりました。
中学時代は学校に行っていなかったのに、高校になって急に変わった。と思われるのが嫌だったんですよね。
案の定、セリフを間違えてしまいました。
そこからは応援演説者、立候補者と続いていきます。
応援演説者の委員長は堂々としていて立派でした、流石委員長といった感じでしたね。
そしてA君。
正直、僕からみたA君は少し頼りないイメージでした、文章を書くのは苦手だったし、あがり症で人前に出ると喋れなかったり、クラスにも馴染めていない印象だったので、心配だったんですよね。
でも杞憂でした。
噛みながら、間違えながら、詰まりながら、必死に自分の思いを伝えるA君を見て、心の底から尊敬しました。
それと同時に、あんな下らないことで恥ずかしがっていた自分が酷く矮小に見えました。
そこから無事に選挙は終わり、数日後。
A君は見事当選しました。
当選者発表の放送が流れた時、クラス中が湧き上がり、私も自分のことのように喜んだのを覚えています。
私の学科から生徒会役員が出たのは珍しいことで、担任も鼻が高そうでした。
その経験を経て、少しずつ、自分の中で何かが変わっていくのを感じました。
4.その役、立候補注意!
生徒会選挙や諸々の行事が終わり、季節は冬に差し掛かろうとしていました。
その日、朝の時間に担任から、生徒会の下部組織である企画委員会への立候補案内がありました。
企画委員会とは、私の学校の主要な行事である体育祭、文化祭、クラスマッチを企画、運営する組織で、生徒会の指示によって活動します。
基本的にはその主要行事の中から一つを選び、その行事成功を目的に、業務に従事することになります。
私は文化祭企画委員に立候補することにしました、成績不振を学校内の活動によって誤魔化そうという、邪な理由でしたが、思い立った影響にはA君の存在があったと思います。
数週間後、文化祭企画委員が召集されました。
忘れられない激務の開始です。
学校の主要行事は
体育祭
↓
文化祭
↓
クラスマッチ
の順に行われ、各学期に一つずつ実施されます。
文化祭は2学期、9月実施です。しかし、企画委員の仕事はその年の1月から始まります。
後に生徒会役員となり、全ての行事に携わったからこそ分かるのですが、文化祭が一番ヤベーです。
忙しすぎる。
体育祭やクラスマッチは、文化祭と比べて準備する物が多くありません(それでも準備に2~3ヶ月程度かかる)。
当時の僕は知る由もないことですが、文化祭は本当に激務でした。
その仕事は辛く、厳しく、本当の本当に楽しい物でした。
毎週2回の定例、活動時間は15:30~21:00まで。
授業受ける時間より企画の時間のほうが長いという…
その業務内容は多岐に渡り、全校生徒で一つの作品を作り上げる全校企画の内容決めや、ステージ出演者のオーディション、タイムスケジュール制作、生徒、先生向けの案内書類などの各種書類制作等々…
キリがないほどやることはありました。
その年は20人ほどが企画として活動していましたが、私以外が女子というなんともアウェーな空間(実際はすぐ打ち解けた)で、結構大変でした。
それに、私の学校は先生が殆ど介入しないんですよね、各行事担当の先生がいるんですが、その先生以外は大体ノータッチ。
アニメの中の生徒会みたいな感じで、予算配分までも任されるという、高い裁量と決定権を有していました。
だからこそ忙しい、1000人規模のイベントをたった20名前後の生徒のみで企画、運営しろというのですから、酷な話です。
ただ、本当に楽しかったんですよね、誰かの為に何かをする。というのも、非常に楽しかったのですが、全校生徒のために尽力する。というのは、また違った高揚感がありました。
それに、自分で言うのもなんですが、なまじ仕事が出来てしまっていたので、企画が本来する仕事以上の仕事を頼まれたりもしました。
先輩から頼られている。っていうのも嬉しかったんでしょうね。
その企画としての活動は僕に対して好影響を与えました。
企画は生徒会の下部組織なのだから、日々の生活も気をつけなくてはいけない。的な、自分のポジションに誇りを持っていたんですね。
授業中の居眠りや、遅刻などが目に見えて減っていき、超優等生になりました。
そんな生活の中でより精度の高い業務処理能力を身に付けました。
僕のeスポーツにおける業務の基礎や、責任ある立場になった際の過ごし方は学校内での業務経験に基づいているんですよね。
eスポーツで何かをしたいと思うのなら、eスポーツ以外の事も積極的に学ぶ必要があると僕が唱えるのは、経験からなんです。
ここまでで前編にしたいと思います。
後半は絶対eスポ要素出てきます!
最近体調が悪く、連載ストップしたりしてすみませんでした…それではまた来週。(第3/16 完)
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