コラム 連載 e-sportsチーム生存戦略

e-sports業界の発展に必要な変化② 稼げる大会を増やすこと

e-sports業界の発展のためには、チームが黒字化することが欠かせません。チームを黒字化させ、e-sports業界を発展させるために必要な3つの変化があります。

今回はその2つ目「稼げる大会を増やすこと」についてお伝えします。

稼げる大会には2つの意味があります。1つは、選手が稼げるということ。もう1つは、運営者が稼げるということです。

選手が稼ぐために必要な大会とは

ソニー生命株式会社が実施した「中高生が思い描く将来についての意識調査」での将来なりたい職業ランキングによると、男子では1位Youtuberなどの動画投稿者、2位プロeスポーツプレイヤー、3位社長などの会社経営者・起業家、4位ITエンジニア・プログラマー、5位ゲーム実況者となっています。

女子では、1位歌手・俳優・声優などの芸能人、2位YouTuberなどの動画投稿者、3位絵を描く職業(漫画家・イラストレーター・アニメーター)、3位美容師、5位ボカロP(音声合成ソフト楽曲のクリエイター)、デザイナー(ファッション・インテリアなど)となっています。[出典:出所:ソニー生命株式会社「中高生が思い描く将来についての意識調査」]

どちらもYoutuberは人気ですが、Youtuberを目指す子供が多いのは、本人が楽しそうにしていて、かつ億万長者だという夢のある職業だからです。

もし、有名Youtuberが食べるものにも困り、狭い部屋で、自分と同じような地味な生活をしているとしたら、憧れる人はほぼいません。

男子の方では経営者なども上位にランクインしていることから、より稼げる職業への魅力を感じている傾向があると言えます。

男子の中でプロe-sportsプレイヤーの人気が高いのは、ゲーム好きな男子が多いことが影響していると思いますが、稼げる職業だという認知が少しずつ広まっているからだとも言えます。

国内でも人気が急上昇中の「valorant」では、国際大会の賞金は1億円を越えています。「Apex Legends」のリーグは総額5億円以上の規模で開催されています。

そういう情報が目に触れることで、「自分もプロe-sportsプレイヤーになりたい!」と思う人が増えるのは理解できます。

ここ最近はe-sportsでも賞金付きの大会も増えていますが、ゲームタイトルによってはまだまだ金額が小さく、現実的には夢のある職業だとは言えない状況です

例えば、1年に1度の大会で、優勝賞金が500万円だとしたら、優勝できたとしてもそこそこのサラリーマンの年収と変わりません。

もちろん「好きなことをして生活できることが幸せだ」という考え方がベースにありますが、プロ選手になれば、好きなゲームでも辛い瞬間をたくさん味わっていると思います。

しかも、大会に優勝できなければ収入がないとなれば、より必死にトレーニングもするし、賞金以外の稼ぎを作るための活動にも取り組まなければなりません。

それだけ頑張っても生活が苦しい状況では、そうなりたいと思う人は増えませんよね。

高額賞金の出る大会が増えたとしても、そういう大規模な大会で優勝できるチームや選手はほぼいません。なので、多くのチームや選手が身を削り、e-sportsに取り組むことになります。

理想的には、リーグや大会に参加しているチームや選手に、出場に対しての報酬があれば一定の稼ぎは得られます。ボクシングのファイトマネーのようなものです。

ですが、そこまでの体制を作れるようになるのは、まだまだ先です。

今はまだビジネスとして整備されていない状況なので、まずは賞金つきの大会を増やすことが大切だと考えています。

少額でも大会の数が多ければ、その分稼げるチャンスが増えるので、救われるチームや選手はもっと増やせます。活躍の機会も増えます。

なので、e-sports業界の発展のためには、中規模以上の大会の数が今よりも増えることが必須だと考えています。

運営者が稼げる大会とは

参加する選手が報酬を得られるのはもちろんですが、その大会を運営する事業者が稼げていないと、その大会自体が続けられなくなります

なので、規模が大きく参加者のいる大会でも、突然打ち切りになることがあります。

多くのイベントがスポンサー企業による協賛金で運営されています。

私はこれまでいろんなイベントに関わってきました。イベントを主催する側としても、イベントに協賛する側としても。

ですが多くのイベントにおいて、協賛社が協賛金以上の価値を受け取れていたとは感じられません。

ある程度規模のあるイベントでは、数千万円の協賛金がかかるものの、得られるメリットとしては会場でのロゴ掲出、配布物へのロゴ掲載、場内でのアナウンスや展示などだったりします。

会場に訪れた人たちへの露出機会を作ることはできますが、多くの場合、これらの露出物は来場者にとって背景と化しています。

例え、来場者の目に止まったとしても、ただそれだけのことです。その企業やブランドに対して何かを感じることもなく、協賛してる企業やブランドの名前を目にするだけです。

果たしてそれに数千万円の価値があると言えるでしょうか?

webで広告をしたら同じ金額で数倍の露出量を担保できるので、ただ露出をするだけの投資先としては、かなりコスパの悪い施策になります。

なので、多くの企業がイベントへの協賛をしたいと思いません。それが数十万円でも数百万円でも同じです。

基本的に、費用対効果を測れない施策に対して、企業はお金を出したくありません。

趣味でやるなら自分達のやりたいことをやりたいようにすれば良いですが、それに企業を付き合わせることは難しいです。

なので、企業の意図を組んだ協賛メリットを用意して、他の施策にお金を使うよりも多くの露出ができたり、ターゲットの興味を惹きつける露出の仕方ができたりすることが大切です。

e-sports業界の発展のためには、企業のメリットを考えたイベント作りが必要です。

 

筆者プロフィール

 

平岡大輔
GO CRAZY GAME(GCG)プロデューサー
ゲーミングサプリ「ガチサプ」開発&販売責任者
マーケティング脳をつくる会社 株式会社テマヒマ 代表取締役

自身が格闘ゲームに没頭したことを皮切りに、ガチゲーマーのためのパフォーマンスサプリ「ガチサプ」を開発、e-sports業界の発展のためにコミュニティ活性化に努めている。

e-sportsチームの内情を知り、業界の発展のためには「e-sportsチームが事業として黒字化できるビジネスモデル」の構築が必須だと考え、チームの収益化のための活動に取り組むプロジェクト「GO CRAZY GAME(GCG)」を立ち上げた。

100社以上の企業のマーケティング支援、組織改善に取り組んできた経験とノウハウを使って、e-sportsチーム事業の収益化・安定化を実現させるために活動中。

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平岡氏の取材記事はこちら

 

ガチサプ×FUKUSHIMA IBUSHIGIN 翔選手対談~謎多きチームに根掘り葉掘り聞いちゃいました~

https://gamer2.jp/11608/

 


 

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