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NASEF JAPAN主催「第2回 eスポーツ国際教育サミット 2021」レポート

11月14日(日)にNASEF JAPAN主催の「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」が行われました。

withコロナでの米国のeスポーツと高校生の在り方や高校eスポーツ部顧問の教員や「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」で優勝した水戸啓明高校の学生らが登壇し、教育におけるeスポーツの在り方を考える、そんなサミットとなりました。

以下、要点をまとめたものとなります。

「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」

次世代が成⻑するために、eスポーツを活用した教育、そして人材育成を支援する国際団体、北米教育eスポーツ連盟 日本本部(通称:NASEF JAPAN/ナセフ ジャパン、会⻑:松原昭博)は、この度、第2回目となる「eスポーツ国際教育サミット2021〜ウェルカムジェネレーションとともに創る、eスポーツの教育と未来」を、2021年11月14日(日)オンラインにて開催いたしました。待望となる第2回開催には、教育現場の主人公である高校生の初登壇。コロナ禍による将来予測が難しい現状と向き合い、新しい未来に向けて「eスポーツ」という時代が求めるコミュニケーションツールでチャレンジし成⻑していく生徒、また生徒を支えコロナと奮闘する教員たちからみた教育の最前線に迫るサミットとなりました。

<TOPIX①>withコロナにおける、米国でのeスポーツと高校生と活動の在り方について

内藤氏は予測不能な社会の変化"VUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語)"に、日々向き合っている生徒たちの現状を例に挙げ、これからの未来を生き抜くための
スキルの必要性を語りながら、NASEF JAPANのビジョンを話しました。

北米教育eスポーツ連盟 日本本部 統括ディレクター 内藤裕志氏

未来を生き抜くためのスキルとして"OODAループ(勝敗に関わる意思決定と実行のための思考法)""リーダーシップ""コミュニケーション能力""思考的能力・Steam的発想"を挙げ、最後には日本国内でも引き続き"教育としてのeスポーツ"の可能性を追求していく決意を述べました。

<TOPIX②>"私立・公立の教員"が登壇し、eスポーツ部の可能性と文武両道に向けた指導法を伝授!

 

 

 

 

 

最初に登壇したのは大学進学率がほぼ100%、勉強と部活動の文武両道から生徒の自立と共生を目指す、朋優学院高等学校の岸波禎人教諭。「進学指導と部活動の両輪ではぐくむ、生徒の自立と共生」をテーマに基調講演を行いました。

学業との両立のために勉強の負担にならないような仕組みづくりに注力しており、家での活動制限をしない一方で、"とにかく学級学業に支障をきたさないこと"を条件にしています。具体的には定期試験で赤点を取らないことで、赤点を取った場合はテストの解き直しをしっかりやらせてから部活動に参加させる、成績が非常に悪い場合には部活動を一度やめさせて成績改善に向けて努力する時間を与えるなどの工夫をしています。

またゲーム依存を防ぐためには「教員の方から優先順位と目標を明確化させるのが大事な仕事かなと考えています。」とのこと。eスポーツ部、ゲームの経験がないという教員に向けては「その指導だけが教員の仕事ではないので、いかに部活動と両立させられるかというところで、生徒に声をかけるのも非常に重要な役割だと考えています。」と話しました。

 

 

 

 

 

続いて登壇したのは、茨城県と神奈川県の公立高校でeスポーツ部を創部した経験を持つ県立東海高等学校の千葉徹也教諭。「救済策としてのeスポーツ」をテーマに基調講演を行いました。

冒頭で千葉先生は、コロナを踏まえ高まる孤独問題を例に挙げ、その孤独からeスポーツが生徒を助ける一つの手段になるのではないかという提議をしながらeスポーツの可能性を紐解いていきました。

「ただゲームで遊ぶのではなく、努力をすれば何かが得られるというゲーム独自の期待感に着目しました。この目標と評価のバランスをモチベーションに繋げることが、アクティブラーニングというものに繋がるのではないかと考えています。」とコメントし、いままでコンピューター部にはなかった“競技性”をeスポーツで持たせることで、生徒たちにチーム力や対戦相手への配慮、リーダシップやサポートなど、生徒たちに自分らしい"居場所"が生まれたことを、ご自身の経験から話しました。

また、こういった生徒の興味関心から進路を見つけることが保護者にとっても安心につながると述べ、「生徒の成長が実際、目に見えてわかるのは大変うれしいことです。そして、岸波先生のおっしゃっていたとおり我々顧問がやるべきことは何かというと、ゲームの話よりかはどちらかというとルールをしっかりと明確にして、そして生徒の規範意識は体調管理をしっかりと行っていくここが一番重要かなと思います。」と熱く語りました。

<TOPIX③>「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」初代優勝校!茨城県水戶市 私立水戶啓明高等学校

この日は、eスポーツを使って社会問題を解決できるのかという課題に対し、全国4校を代表するグループがアイデアを発案しプレゼンテーションを行うコンテスト「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」の大会結果が発表されました。

記念すべき初代王者に選ばれたのは、茨城県水戶市 私立水戶啓明高等学校に所属する高校1年生チーム。

「グッコメ!!〜“Good comment”でコミュニケーションをもっと楽しく!」と題した作品は、SNSで巻き起こる誹謗中傷コメントに対して通報といった手段で対処するのではなく、グッドコメントをした利用者に対して報酬を与えようというものでした。また良いコメントをすることで、ゲーム内通貨やオンラインショップでのセール券を獲得できる仕組みを整備するだけでなく、食生活が偏りがちなゲーマに対しも、地元茨城のお米を食べて健康になってもらいたいという想いをのせて、お米と交換できる仕組みも盛り込んでいました。

またオープン参加ではあったもののCLARK NEXT Tokyoの生徒2名が登壇し、中学生向けの競技大会「第1回クラーク国際主催中学生eスポーツ選手権開催」の活動報告をしました。

なぜ高校生大会はあるのに中学生大会はないのかという疑問から開催されたと話し、本格的な大会運営を経て、出しながら進行するなどの大会運営を経て、「参加してくれた中学生も楽しんでくれたように感じたので、開催してよかったと心から思っています。また、たくさんの機材があって、どの働き、どの機材がどういう働きをしているかなどを教えてもらうことができたので、貴重な勉強になりました。後日配信を見返して、自分のものが配信で綺麗に反映されていたことに気づいたは嬉しかったです。」とコメント。

<TOPIX④>NASEF JAPAN初!先生たちの交流会でみえてきた、eスポーツ部の課題と目指すべき未来

サミットの後半では、NASEF JAPANのメンバーシップ加盟校の先生を対象に初の座談会が開催。

"一番したいeスポーツの活動"について、東海大学札幌校の高野先生は「やはりオフラインで集まる機会を増やしたいと思います。先生たちの横の繋がりはまだまだ少ないのですが...例えば、地域の学校だとかと一緒になりながら合宿だったりとか、2泊3日のそういった勉強会みたいな形でやってもいいのかなというふうに思いました。」と発言しました。

一方で浮き彫りになった課題は、"部活動の環境づくり"でした。

茨城県水戸市 私立水戸啓明高等学校の高田先生は「おそらく機材関係が一番問題になるかなと思います。やはりゲーミングPC1台買うにしてもやはり10万以上してしまうっていうところもありますし、現在高校eスポーツ応援プロジェクトの方でレンタルPC3台借りてるんですが、やはりそれでも部員が今19名ぐらいおりますので、全員に渡らないっていう状態は厳しいかなと思ってます。」と資金面での深刻な現状を報告しました。すると"そもそも県立高校だと、県所有のPCでいじってはいけないというルールもある"といった情報や、それに対して"私も苦労しました..."や、"それは知らなかった!"などのコメントが殺到しました。

和歌山県で、唯一eスポーツを推進している星林高校の⻄川先生からも、「普通の県立高校で、サーバーに繋がらないような設定が多いんじゃないかなと思います。そのときに交渉して許可を取るんですけども、ポートの番号とか、それからサーバーのアドレスとかを、きっちり言わないと何か設定してもらえないんです。そういう情報があんまりないんですよね。それ以外に、支援プログラムでネット回線も借りてるんで問題ないんだけども、今度そちらの回線に繋ぐと、学校のパソコンの設定を変えないといけないという問題がありまして...。ゲームの方から見ると、チート行為になると、設定がいろいろと変えられないようになっていて、そういうのもクリアしないといけないかなというのがありました。」という、思わぬハードルも共有されました。

<TOPIX⑤>NASEF JAPAN活動報告会と、意気込み

サミットの終了後は、報道関係者向けにNASEF JAPANの活動報告が実施されました。

活動報告会では、北米教育eスポーツ連盟 日本本部 松原会⻑(写真中央)が、2021年4月以降の活動について解説しました。

「発足して1年、NASEF JAPAN自身の活動を追うだけではなく、我々は4つの外部連携強化を行いました。今後はファンドレイジング(⺠間非営利団体が活動のための資金を集める行為)活用に関して、活発な議論がされておりNASEF本国との意見交換を通じて、我々も活動の幅を広げようと思っています。」と話しました。

最後に、スカラスティックディレクターの坪山氏(写真左)は、「実際に先生方から現場の声を聞くことで、今後の課題も見えてきたのかなと思います。不安な先生も先輩になる先生と一緒に解決できるものがあるのではないかなと思っています。」と述べました。

統括ディレクター 内藤氏 (写真右)は、「 eスポーツクリエイティブチャレンジは、高校生の知識や経験が非常に増すだけではなく、彼らに対するゲーム大会だけではないスポットライトの重要性を再認識しました。このような形で高校生に対し違ったスポットライトの当て方を、もっとこれから力を入れてければなというふうに思っております。」と決意を述べ、「第2回 eスポーツ国際教育サミット 2021〜ウェルカムジェネレーションと共に創る、eスポーツと教育の未来〜」は閉幕いたしました。

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