独占取材

『プレイヤーファーストでeスポーツを盛り上げる』RayRoad Gaming代表 都築氏に聞くプロチーム運営の極意

2019年、『プロeスポーツプレイヤー』が男子中学生の将来なりたい職業2位にランクインした調査結果が話題になりました。

実際のところ、プロゲーマーという職業はまだ「稼げる状況にない」「専業とするのはハードルが高い」と言われるほど、プロ一本で活動できる選手は一握りであるというのも事実です。

『大乱闘スマッシュブラザーズ』(以下、スマブラ)の国内トップチームとしてその名を馳せるRayRoad Gamingレイロードゲーミング(以下、R2G)は「ゲームのプロフェッショナルにそれ相応の報酬が支払われるような世の中を目指す」ことを目標に掲げるマルチゲーミングチーム。

所属する選手達は国内外の大会で常に上位の成績をおさめ、イベントや配信も積極的に行いファン層を獲得。両面で着実に成果を伸ばし続けています。

今回は 、R2G 代表の都築 魁つづき すぐる さんにチームを設立するまでの経緯や運営の裏側について詳しく聞きました!
お話を伺うほど興味深いのは、4つの会社を経営しながらチームの運用を担う都築さんご自身の遍歴。話術に長け、明確なビジョンメイクでチームを牽引し続ける情熱の源とは?

[大乱闘スマッシュブラザーズ]とは…

1999年にNINTENDO64のソフトとして第一作目が発売された、任天堂のゲームキャラクターがタイトルの垣根を超えて大集合し対戦するアクションゲーム。初代以降はゲームキューブ、Wii、ニンテンドー3DS、Wii Uとハードが移変わり、2018年に発売された最新作はNintendo Switch版で発売された。マリオ、リンク、カービイ、フォックスなど70体以上のキャラクターを操作して対戦を楽しむことができる。(2020年3月現在)昨年11月には『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(Super Smash Bros. Ultimate)』の全世界累計売上本数が1,571万本を突破したとの報道もありました。

RayRoad Gamingレイロードゲーミング

2016年以降国内・海外含むスマブラ大会で優勝を総なめにした「かめめ選手」や運営にも携わる「えつじ選手」、今年の『EVO Japan 2020』にて上位成績をおさめた「ぱせりまん選手」などスマブラをはじめとした強プレイヤーが所属するプロゲーミングチーム。2018年から始動し、「e-sports並びにゲーム業界を盛り上げビデオゲーム市場への貢献すること」、「世界中のゲーマーから憧れを持たれ、誰もが知っているようなチーム作り」を掲げる。国内外の大会に積極的に参加し、チームとしても月に一度のリーグ戦を行うなどファンとも活発に交流しコミュニティを広げている。

RayRoad Gamingのスマブラ選手は平均年齢21歳の全員専業プロゲーマーであり、2月末にもアメリカ デトロイトの国際大会に参加したばかり。都築さんは「しっかり結果を残すメンバーばかりです。」と話します。(以下、敬称略)

ゲームは「ありとあらゆる楽しみを提案してくれる」かけがえのないもの

ーー早速ですが、R2G 設立のきっかけを教えてください。

都築「一番のコンセプトとしてはeスポーツ並びにゲーム業界を盛り上げて行きたいという思いと、昨今はどちらかというとオンラインゲームが強い中で、私自身はビデオゲーム(コンシューマーゲーム)が好きで、その市場自体に貢献したいというところがあります。また、世界中のゲーマーが憧れるような、誰もが知っているようなチーム作りを目指している…というのがきっかけと言いますか、思いだったりしてます。」

ーーコンシューマーゲームに特に思い入れがあるんですね。

都築「自分自身が元々小さい頃からゲームをやっていて、ゲームは身近なものとして存在していました。小さい頃の思い出補正もあると思いますが友だちと遊ぶためのツールでありも、それがすごく楽しくて。ゲームって空間に彩りや幸福感を与えるものだと思うんですよね。またeスポーツという側面で見ると、壮大な世界観に圧倒されながらも淡々と一人でのめりこめるような魅力もあると思っています。そんなゲームというコンテンツ、企画や開発、運営を行っている全てのクリエイターやデベロッパーに対して強くリスペクトを持っています。」

高校生時代から個人事業主として活動

ーースマブラをチームの主軸に置かれているのはプレイ人口が最も多いコンシューマーゲームという理由からと伺いましたが、それ以上に強く制作陣へのリスペクトを感じますね。都築さんが一番最初に会社を立ち上げられたのは何歳の時だったんですか?

都築「(会社の)立ち上げは21歳か22歳でした。ただ個人事業主としての動きを16歳ぐらいだったと記憶しているので、その頃に音楽とITで色々でいろいろと…。バンドマンDJをやっていたりしていて。イベントの企画を自分で行うオーガナイザーをやったりしていました。私自身コンテンツ力があると勝手に思っていたりするんですけど(笑)。」

好きなことをしたいから社長になった

ーーかなり早い段階でビジネスに目覚めていたんですね!高校に通いながら事業を始めたいという思いに至った理由はなんだったんですか?

都築「元々小学校から中学2年生までは、芸人を目指してたんですよ。その頃って一番バラエティが盛り上がっていて、『エンタの神様』『レッドカーペット』『M-1』が始まった頃でした。まだYouTubeもないときだったので、学校に行ったら友達みんなテレビの話をするんですよ。そんな中で芸人っていいなと思っていたのが、小学生ながらに年功序列で労働集約型の一般企業で働けるビジョンが全くなかったんです。

当時はなんとなく3つの考えがあって、1つめに『自分自身でライフスタイルやライフワークをある程度コントロールできるようにしたい』というものと、2つ目に『好きなことを仕事にしたい』というもの。3つ目は、その頃ダウンタウンさんとかをテレビで見て『めちゃくちゃ稼げそうだな』と思っていたという(笑)。

そういうのをきっかけに、本気でNSC(吉本の養成所)に行くか悩んでたんです。でも、そもそも芸人になるだけで大変なのに、そこからさらに大成してお金を稼いでっていうところまでいけるかっていったらあまりにも難易度が高すぎるなと思い至って。じゃあこの3つの条件を満たせるのは何なのかって思った時、『社長』ってそうじゃないかなと思ったんですよね。

『好きなことを仕事にできるし』『会社のルールを自分で作れるし』『社長ってお金そもそも稼いでそうじゃん』ていうイメージから自分は経営者とか、事業者としてビジネスマンになろうっていうのがきっかけで、どんどんIT化とか情報化が進んでいくなかで、それなら情報工学科があるような高校に進学しようと。そういう流れでした。」

ーーご実家が自営業をされていたとか?

都築「いえ、まったくないんですよ。だから結構特殊と言われますね。結構経営者の知り合いたちは、割と元々実家がお金持ちとか自営業だったり、大変で壮絶な人生を送ったとか…そういう人が多いんですけど、家庭環境だけでいうとすごく普通なんですよ。」

ーーそこで発想が「好きなことをしたい」→「じゃあ社長になろう」っていうところに行き着くのが面白いですね(笑)。

都築「切磋琢磨できる人間が身近にいたんです。当時芸人を目指していた時の相方だったんですけど、彼が今バチバチのビジネスマンで互いにディスカッションし合ったりする仲でした。私自身哲学という学問がすごい好きで、そこに触れていたというのも大きいかもしれません。『考えることを考える』みたいなことをやってたのは大きかったかなと。中学1年生の頃から哲学書や哲学史とかをなぞったりするのも好きでした。」

制作受託からチーム設立へ

ーー4年前に法人化した事業の収益の柱は何だったんですか?

都築「WEBの制作、開発でした。制作系は外注が主流の時代だったので需要が多かったです。私自身営業が好きで得意だったので、段々と人脈が増えましたね。」

ーーたしかに、営業がお得意というのが想像できます(笑)。そして2年前の2018年にチームを立ち上げるに至ったということですね。

都築「そうですね。その間にもゲームはずっと続けていて、もう1人の発起人と一緒に立ち上げました。スマブラは世界的にもユーザー数がダントツのコンシューマーゲームなので、チームを育てれば成功すると確信があったんです。」

モチベーションを高い状態で維持するために

ーーチームに所属する選手に対して、サポートやケアと言う側面ではどのようにされているんでしょうか。立ち上げ当初に苦労はありましたか?

都築「苦労…当初は結構ありましたね。まずゲーマーの方々というのはビジネスマンでもないし社会人でもない方が多いので、ちょっと扱いが難しいというか、悪い意味ではなく社会経験をしていないことによって、社会人としての対話の仕方がわからない人は多いので、我々が合わせると言ったら上からの発言のようで語弊があるんですけど、同じ様な温度感にならなければいけないんだなっていうのはありましたね。

私自身もそうですし、弊社スタッフ昔からゴリッゴリのゲーマーだったので(笑)その気持ちがとても良く分かります。ですので、よりゲーマーに近く気持ちがわかるスタッフ一同で、ゲーマーとしてのコミュニティ形成の仕方や対話の仕方をサポートしています。ゲームコミュニティの中独自の常識や観点があるので、彼らに対しては気持ちよくゲームをやってもらってモチベーションを常に高い状態で維持したいと思っているので。」

プロゲーミングチームをどうやってマネタイズするか

ーーチーム内でメディア対応や技術的な指導を目的にした講習を行うことはあるんですか?

都築「はい。技術的なところとコンプライアンス面の両方行っていて、技術的なところでいうと、そもそもうちの戦略でもある【プロゲーミングチームはどうやってマネタイズするか】にも関わってくるものになります。大会の賞金はというと、そもそもオフラインの大会って国内は10万円以上出せないという事情があります。ではそれ以外でマネタイズしなくちゃいけないと考えた時に、インフルエンサーとしてプロゲーマーを立てるのが一番早いと言う考えから当チームではすべてのプレイヤーに対してまず配信を前提とさせています。これを統一しているチームってあまりなくて、ここ半年~1年くらいで急激に増えた印象です。元々やっていたチームでも「全員強制」というのところはなかったと思うんですよね。」

ーー所属選手全員がYouTubeのチャンネルをもっているんですね!

都築「そうなんです。じゃあYouTubeを伸ばすためにはどうしたらいいの?っていうナレッジとかノウハウの共有ができるのがうちの強みです。具体的には配信に必要なサムネの作り方とかを教えたり。その流れでPhotoshopやillustratorの使い方や、動画編集のためにAdobeのPremiereを使えるよう講習を行ったりしています。」

ーーインフルエンサーとして、自分でも集客能力を持てるようにサポートをしているんですね。

都築「また、講習とは違いますがプレイヤー全員と毎月一回面談をしています。基本的にプロゲーマーは社会経験が少ない人が多いんですけども、とはいっても少しずつ『社会人として』というものも身に着けて頂きたいというのはあるので。そこは適宜面談によって、プロとしての身構えについて、個人事業主としての社会の身構えというところは話したりもしますね。直近だと、確定申告の仕方とか(笑)。」

ーー2020年、チーム主体で行う予定の活動はありますか?

都築「今イベントを週イチでやっているんです。池袋にある『僕らの1DK』という場所で、うちのプロスマブラーと対戦できて、アドバイスももらえる『ぼくスマ』っていうイベントです。」

ぼくらの1LDK Twitter

都築「また直近の動きとして、毎月1回スマブラのリーグ戦を始めたんです。日本でのアクティブユーザー数の中ではやっぱりスマブラは強いので、コアユーザーはもちろん広く視聴者が集まってくれるんじゃないかなと思っています。」

ーーリーグはどのような形態で行っているんですか?他チーム参加型にもなるんでしょうか。

都築「元々はうちのチームだけで回していたんですけども、こちらから声をかけさせて頂いて、どんどん外部の人も入ってきて頂く年にしていこうと思っています。」

ーーそれは楽しそうですね!年間トータルで戦績が出てきて、プレーオフがあって…なんてできたら、面白くなりそうですね!!

都築「そうなんですよね。本来トーナメントで参加費を徴収したものを景品として当てるのは賭博にあたってNGなんですが、リーグ戦で配信をYouTubeで配信している時に、盛り上がるとユーザーさんが投げ銭をして下さるんですよね。それをそのまま次回の大会の優勝賞金として当てますよ、としているので、基本的にスポンサーが一個人に対して寄付する形であれば違法性が何もなくすごくクリアな状態でできますし、純粋にファンからの寄付がそのまま行くので、とても健全な形でプレイヤーがマネタイズできるリーグおよび大会という形を取れてます。」

ーー現段階でも投げ銭は結構入るんですか?

都築「投げ銭の施策を始めたのは本当に先月からで、まだテスト段階ではあるんですが、リーグ戦は全てオフラインで行って、会場的には100人規模のところで50人くらいを定員としてみつつ配信もして…という感じなんですが、同時接続もMAX3000人くらい、延べ人数はもっと増えていますので、勢いがあると感じています。この他にも海外向けの動画施策も出しはじめているので、今後海外ユーザーに対しても訴求していこうと思っています。」

プレイヤーにはより質の高い練習や環境づくりを

ーーコンテンツが盛り上がる予感しかしないですね!

都築「やはりプロゲーミングチームとして名乗っている以上結果も出していかなければいけないので、ファンを増やすための施策は運営陣がサポートして、プレイヤーにはプレイに集中してより質の高い練習だったり、それによって成績が残せるような環境づくりにも取り組んでいるのがR2Gの基礎の1つかなと思っています。」

ーー今後新しくチームに加入される方に対して一番重要視しているポイントはなんですか?

都築「『そもそもゲームが好きか』というところと、『ゲームを取り巻く環境そのものが好きかどうか』っていうところですね。私の場合はゲームを作る方々に対してのリスペクトが非常に高いというのもありますし、ゲーム業界に対して貢献したいという気持ちが芽生えるのも純粋に好きだってところからだと思うんですよね。そういうのがないとプロとして継続しないと部分もあるので。」

ーー極端な話、『ゲームのココだけが好き』だと続かないってことですよね。

都築「そうですね。もし2つ加えられるなら『プロゲーマーとしての自覚と覚悟があるか』と言えるんですけど、ゲームが好きであれば、その環境を作ってあげれば適応できると思っています。ゲームが好きであれば、その環境や業界が盛り上がって欲しいと考えると思うはずなので、そこが活性化されることが、自分が好きなものに対して還元できるものだっていう意識が健在化してくると思っていて。そうなると還元するためにはゲーム界隈にとって恥ずかしくないような人物像になることが大事だという自覚が芽生えると考えています。」

ーー本日はどうもありがとうございました!

 

いかがでしたか?

都築さんの経営観やチームを支える考え方は、今のゲーミングチームを運営している個人や団体にとって非常に参考になるものだと思います。今後もeスポーツ界を盛り上げてくれることが期待できる【RayRoad Gaming】から目が離せません!

ゲーマーゲーマーでは引き続き取材を行っていきますのでお楽しみに♪

RayRoad Gaming
https://rayroad-gaming.com/

都築氏Twitter

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