コラム

ゲームに熱中する子どもたちは、果たして不健康なのだろうか。ゲーム障害を不安視する大人たちに知っておいてほしいこと。

男子中学生のなりたい職業ランキング第2位にランクインする「プロeスポーツプレイヤー」。

毎日長時間ゲームをプレイし、その姿を配信したり大会の優勝賞金によって得られた賞金やスポンサーからの支援により生計を立てるプロの「ゲーマー」に、日本の男子中学生は憧れを抱いているのは、もはや周知の事実でしょう。

私もその1人で、中学生の頃スプラトゥーンというゲームに熱中し、同時にプロゲーマーという仕事を知り、いつかゲームをプレイしながら生きていくことを夢見て部活もまともにせずゲームに打ち込んでいました。

今でも最低3時間以上はゲームをする私ですが、学校のことや仕事をしながらゲームを続けていると、どうしても睡眠時間を削らずにはいられません。

そうすると次の日ずっと眠気が続いたり、健康に大きな影響を与えることになります。

競技性が社会から認められ、スポーツとしての一面を見せるようになったゲームですが、やればやるほど「不健康」になってしまうという問題に、目を逸らすことは出来ません。

WHOが新たな病気として認めた「ゲーム障害」。

2018年、日本eスポーツ連合が発足したことをきっかに日本では2018年が「eスポーツ元年」であると言われているのですが(所説あり)、それと同時にゲーム障害、”ゲーム依存症”という言葉も良く耳にするようになりました。

2019年5月に世界保健機関WHOが、「日常の生活よりもゲームを優先する状態などが一年以上続く状態」をゲーム障害として、疾病として定義したのです。

参考:「やめられない怖い依存症!ゲーム障害はひきこもりの原因にも 治療法について

この記事を見てもらえば分かるように、厚生労働省の調査によるとネット依存が疑われる人は成人で推定約421万人、中高生で93万人いると推定されており、ネット依存やゲーム障害についてメディアなどでの発信を続けている樋口進氏によると、彼が院長を務める久里浜医療センターに訪れたネット依存の約90%がゲーム障害であると話しています。

ゲーム障害に関してはまだまだ科学的データが不明確な点もあるため、一概に正しい・正しくないと定義するのは難しいのが現状ですが、朝起きられなくなったり、昼夜逆転が起こっているのは私の生活にも当てはまっています。

ゲーム依存に関して注目度が上がった原因は、何といってもWHOが病気として指定したことにあるでしょう。

ゲーム依存が病気として認定されるもっと前の、私が小学生だった10年近く前から学校では夏休みのゲームの使い方に関しての注意があったり、ネットの使い方に関して講演などを受けていたため、より教育者や子どもを持つ大人の人からゲームに対する考え方は肯定派と否定派がしっかり別れたような感覚がしています。

eスポーツとして、「何かに熱中すること」を肯定する大人たち。
依存症として、「ずっとゲームをしていること」を不安に思う大人たち。

私は普段eスポーツ業界の人間として仕事をしているので、より多くの人が安心してゲームを楽しめるためにこの壁を少しずつ減らしていきたいなと考えているのですが、この問題がなかなか解決しない1つの要因として、”ゲーム”に関しての考え方の違いがあると私は考えているのです。

ゲームの正体は、一体何なのか。

先程も紹介した樋口進氏の調査によると、ゲーム障害の患者がゲームを見た時にアルコール依存やギャンブル依存の患者と同様の異常反応が脳に見られるそうで、専門家の人からみればゲームは「害」なのかもしれません。

ゲームをプレイする人もプレイしない人も、多くの人がゲームを「遊び」だと考えている人が多いのかなと思うのですが、私が考えるに「コミュニティ」が最も相応しい表現だと思います。

ゲームには依存的な要素があって、長時間プレイしていれば生活習慣も悪くなるのは当たり前のことでしょう。

しかしながら、そこまでしてもゲームを遊びたい理由があります。

それは、ゲームを通じて出来上がったコミュニティに属したいからと感じているからでしょう。

例えばeスポーツのタイトルとして遊ばれる対戦ゲームは、今や無料で遊ぶことが出来るものがほとんどです。

この結果多くの人がプレイすることが可能となり、ゲームを遊ぶ人は若者や同世代だけではなくなりました。

私が普段一緒に遊ぶ仲間やゲームを通じて知り合ったゲーマーの中には、年齢が10個近く離れているプレイヤーもいますし、会社経営をしている人や医療関係で働く人も中にはいます。

普段生きている中で、こんな出会いは簡単に出来るものではありません。

TwitterやdiscordなどのSNSやボイスチャットアプリが充実したことによって、ゲーム中にコミュニケーションを取ることも増え、中ではそんな会社経営の現場の話であったり、医療現場の現状など普段では知りえない情報をゲームから手にすることが出来るのです。

そして対戦ゲームでは「ランク機能」というものがあるため、目指すべき目標が明確に提示されています。

数千万という人間が、より高いランクを目指し努力しているため、上に登りつめるということは簡単ではありません。

だからこそゲームが上手い人から聞くアドバイスにはとても価値があるし、私たちはプロプレイヤーに憧れ、そんな人間になりたいと願うことが出来ます。

我々ゲーマーにとって、ゲームはそんな人との出会いを作るための大切な「きっかけ」なのです。

これが、”ゲーム”に関しての肯定派と否定派の考え方の違いだと私は考えます。

ゲームを続けるのは、自分の健康を守りたいから。

私のように毎日ゲームにのめり込んで、朝起きられなかったり昼夜逆転をしている生活を見れば、不健康に見えるでしょう。

しかしそれは、あくまで外的影響を見ているに過ぎません。

心やメンタルといった内的影響を見ることが出来れば、私たちの生活はゲームによって支えられているといっても良いでしょう。

参考:「コロナ禍で「ゲームが健康にいい」3つの理由

コロナによって外へ出ることが簡単ではなくなり、多くの人たちがストレスを抱えているように、私たちはゲームという人と繋がるための手段を絶たれてしまうと強くストレスを感じます。

ですから、この議論を進めるためにはまず「ゲームの時間は必要なもの」として考えることが第一歩だと考えています。

【執筆者】

よろず
eスポーツに関するコラムをnoteにて執筆中。noteのフォロワー数は6800人以上、累計150000PVの実績をもつ。
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