コラム

【ワンボタン瞬獄殺】誤情報を責める?伝える勇気を称える?

5月1日~5月6日の間、愛知県にあるラグーナテンボスにて、格闘ゲーム『ストリートファイター6』の追加キャラクター"豪鬼"の試遊イベントが行われています。

それに関連して、話題になったのが「ワンボタン瞬獄殺」。

ワンボタン瞬獄殺!?

5月1日、ゲーミングチーム CAGに所属するプロゲーマー、えいた選手がX(旧Twitter)にて次のようなポストを投稿し話題になりました。

「瞬獄殺」とは、『スト6』の追加キャラクター豪鬼の代表的な必殺技のこと。従来の操作方法では独特で複雑なコマンド入力をすることで繰り出すことができたのですが、『スト6』の新操作方法のモダン操作ではそれをワンボタンで出すことができるという情報です。

瞬獄殺はいわゆる無敵時間のある移動投げで、密着状態では発動を見てから回避することができなかったり、対空として使用することができたりと非常に強力であることがシリーズの慣例となっています。

その瞬獄殺をワンボタンで出せるというのは、プレイヤーにとっては非常に衝撃的なことでした。

しかし、えいた選手のポストがあった翌日、事態は一変。

『スト6』のメーカーであるカプコンが、公式Xにて「ワンボタン瞬獄殺」を否定する内容をポストしたのです。

これを機に、えいた選手を「不確定な情報を拡散した」「公式に誤った情報を訂正させた」と責めるような意見や、逆に「えいた選手がかわいそう」という意見がXに投稿され、5月2日現在コミュニティの一部が少しざわついています。(とはいえ、多くの人は一連のことを人狼ゲームにたとえるなどして温かい目で見ているようです!)

ロケテストという文化

今回の件をより深く理解するためには「ロケテスト」について知っておく必要があります。

ゲームセンター(アーケード)で格闘ゲームが人気だった時代には「ロケテスト」という文化がありました。

これは、正式にゲームが稼働する前に、限られたゲームセンターで開発中のゲームを稼働して、プレイヤーの反応を見たり意見を聴取したりすることで、正式稼働時に調整・修正することを目的とするイベントのようなものです。

プレイヤーは通常通りプレイ料金を払う必要がありますが、いち早く新しいゲームをプレイすることができるというメリットがあります。また、シリーズ作品の場合は前作からの変更点・調整内容が注目され、ロケテスト参加者の中にはそれらを調べる人が多くいるのも特徴です。

PCゲームで多く見られるオンラインの「αテスト」「βテスト」が、ネット上ではなく現実世界で行われているとイメージすると分かりやすいかもしれないですね。

今回の『スト6』の豪鬼試遊版では、豪鬼の追加以外に他のキャラクターにも数多くの調整が施されているため、ロケテストのような盛り上がり方をしているという訳です。

調べる努力、情報を伝える勇気は偉大

今回の件で前提として理解しておくべきことは「豪鬼試遊版が、5月22日の大型アップデートでそのまま採用されるとは限らない」ということです。

公式から調整内容が発表されておらず、また過去のロケテストの文化を鑑みると、今後さらなる調整が入る可能性があります。豪鬼試遊版で有志によって調べられた調整内容も、製品版では変更されることがあるかもしれません。それを踏まえた上で、現段階の調整内容で一喜一憂する"お祭り感"も、またロケテストの楽しみだったりします。

今回「ワンボタン瞬獄殺」の情報は公式によって否定されてしまいましたが、限られたプレイ時間や環境の中で調べて、それをいち早く多くの人に伝えようとしたえいた選手の行動は、非難されるべきものなのでしょうか。えいた選手は、有益で楽しい情報を多くの人に伝えたいという気持ちからポストを投稿したのではないでしょうか。結果的には誤った情報だったことが判明しましたが、そもそもすべてが未確定なのが試遊版・ロケテストであることを鑑みると、えいた選手を責めるのは少し違うのではないかと思われます。プロゲーマーという注目される立場でありながら、積極的に情報発信しようとしたえいた選手の勇気は、善意として捉えられるのが自然だと思いませんか?むしろ萎縮して最新の情報を発信しづらくなってしまうことの方が、コミュニティにとってはデメリットであると思います。

また、新規プレイヤーからの「なぜ調整内容を事前に発表しないのか」という純粋な疑問の声も散見されています。オンラインによるアップデートやテストプレイが一般的でなかった時代のロケテストという文化を、SNSで情報が急速に拡散される現在でもそのまま用いる必要があるのか。プレイヤー、メーカーが共に考えていく必要があるのかもしれません。

格闘ゲームには歴史があり、その長い間の中で周囲の環境や文化も大きく変わりました。昔ながらの混沌とした文化の中にある自由さや楽しさをどれだけ残し、どこを時代に合わせて変えていくべきなのか。その論点の数だけ、格闘ゲームにはまだまだ伝わり切れていない素晴らしさと、発展・改善の余地がたくさんあるのだと思います。

「誤情報を広めたから悪い」と単純に決めつけず、ロケテストを楽しむ文化を理解し、えいた選手の勇気ある行動を称えて、そしてこれから格ゲーの在り方を考えてみてはいかがでしょうか。

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