ゲームをしたい。でも仕事や老後の事などを思い悩むとゲームなんかしてる場合じゃない。そんな未来への不安に包まれた日々をお送りの方にオススメするのが「ゲーム漫画」と呼ばれるジャンルの読み物でしょう。このような世相でございます。「ゲームセンターあらし」やら「ファミコンロッキー」などアグレッシブな内容の漫画もございますが、心身ともに疲弊した方には受付難いという事もあるでしょう。そんな貴兄には吉田戦車著の「はまり道」をお勧め致します。
苦悩と妄想
「伝染るんです」というギャグ漫画がありました。説明がなく真意は想像するしかありません。かぶと虫は受験ノイローゼで、かわうそはハワイを妬み、やくざは教育テレビに夢中でした。当時は不条理マンガと呼ばれ、暗くて奇妙で何故かついほくそ笑んでしまうのです。
そんな漫画を描いていた吉田戦車という作家が、ファミコン通信(当時の名称)に連載していたのが「はまり道」という漫画でございます。初期の頃は不条理な重さがこの漫画にも潜んでおり、半裸の男性が一緒にゲームボーイをしてくれる小学生を探していたり、ドラクエを禁止された漫画家がファミコンカセットをぺろぺろと舐めることで欲求を我慢するなど、文字にしてはいけないような内容の漫画も多々ございました。そのような四コマ漫画が堂々とゲーム雑誌に載っていたのであります。
ゲーム業界に与えた影響
そんな不安や葛藤を表現したキャラクターの中で抜きんでているのが任〇堂の有名ひげ兄弟、緑色の「弟」でございます。当時は1Pキャラクターの色違いで、性格付けなどされていませんでしたが、この漫画の弟は、兄を恐れたり、嫉妬したり、罵ったりして、情緒は非常に不安定でした。現実世界で兄メインのゲームが出ると我慢ならず嫉妬し、違法ポリゴンを食べて非合法にゲームに出ようとする始末。そんな暗く影の薄い弟が、何故か実際のゲームにも影響を与えてしまう事になるのです。兄弟揃ったRPGではぞんざいに扱われ、大乱闘するゲームではネガティブな必殺技を使うようになってしまいました。
なんとかメインを張ったゲームが登場した頃には、残念ながらこの漫画も連載が終了しており、暗いオバケ屋敷を徘徊する弟と、漫画の中の弟を重ね合わせて、重い緑色の気持ちになるのです。そんな不運な男が、この漫画を体現しているのでございます。
ゲームから離れてしまった方へ
この漫画は「ゴッドボンボン」「ニューはまり道」と名前を変えながら連載が続きました。ゲームで言うと「マザー(ファミコン)」から「ポケットステーション(液晶画面で遊べたPSのメモリーカード)」あたりまでに当たります。漫画の中でもスーファミが発売され、コンビニでゲームソフトが販売され、ポケモンの発現、ときメモの熱、家庭用のエッチなゲームなど、歴史を再体験できるのでございます。
ゲームの進化に「コレジャナイ感」があったり、心穏やかな時間が作れず、日々に追われている第一期就職氷河期の方は、この漫画を読む事によって失われたゲームとの楽しい思い出も蘇ることでしょう。大変な時代でございますが休息も必要です。たまにはゲームの世界に戻ってみてはいかがでしょうか?あの頃のゲームも、あの頃は想像でしかなかったゲームも、色々とあなたをお待ちしていることでしょう・・・。