FINAL FANTASY VII REMAKEの体験版をプレイした。
かつて体験版ほしさに購入した「トバルNo.1」を思い出し、懐かしく思う。
次世代ゲーム機が次々と登場した時代。プラットフォームを任天堂からソニーに移したFINAL FANTASY。
あの頃は中学の時の元カノが、高校入って知らない男と歩いている姿を見かけたような気まずさをFF7には感じていた。
どんな男と付き合っているのか探るような気持ちでプレイした体験版は、嫉妬もあってか「何だ、こんなものか。」という感じだった。
思春期の私はPS4のREMAKE版くらいグラフィックが向上すると勝手に思っていたのだ。
REMAKE体験版では壱番魔晄炉を爆破するまえにガードスコーピオンに敗れた。
体験版すらまともにクリアできないのか…。そう言えばFF7を1997年1月の発売日に購入したが、クリアしたのは2007年3月だった。
いったい私は何をやっていたのか。
延々と続くレッスン
ゲームの中でピアノを何度も引いていた。
プレステの脇にはアルトリコーダーを置いてある。
高校の友人が放課後に「FF7はピアノが難しかった」と言っていたのだ。
その一言に引っ掛かり、何かあるのではと思い根拠もなく弾いている。
果たしてピアノとはこの場所のピアノで合っているのか?
それすらも分からない。
メロディはたぶん聞いたことがあるのだろう。
しかしFF3では「猫踏んじゃった」を弾いていたので、既存の曲かもしれない。
このピアノ弾きにどれだけ費やしただろう。
だんだん飽きてきてゼルダの伝説より「エポナのテーマ」とかを弾いたりして遊ぶようになっていた。
かなり遠回りした後にFF7のBGMを、片っ端からアルトリコーダーで音階確認し、それを試してみた。「飛空艇のテーマ」を奏でたところでティファのリミット技をゲットした。
もう諦めていたので急な展開に驚き、またそれを解いた喜びは大きかった。
自分は攻略本も攻略サイトもプレイ後にしか見ない。SF版ゼルダの伝説を攻略本なしでクリアしてから謎を解く喜びを覚えたからだ。
またクリアしてしまったら周回プレイはしない。ゲームとはいえ一度平和になった世界を再び戦火に交えたくないのだ。そのため隠し要素などもエンディング前に集めておきたい。ちょっと強い武器や技のために再び世界を闇に包んでいたら、本当の「魔」とは自分なのではないかと思ってしまう、そんなファンタジー脳の持ち主だからだ。
そのため基本的には情報を入れずに色々な要素を全て集めようとしてしまう。
そのスタイルはSFでも結構シンドかったのに、容量が爆発的に増えたPS辺りから限界に達していた。
この時点でもう何回目のプレイだっただろうか?
周回プレイではない。エンディングは一度も見ていないのだ。
破壊される記憶
最初の挫折はクラウドがスノーボードをする所でバグり、障害物も何も出ず、ただ真っすぐに雪山を滑るゲームになってしまった。
1時間ほど続けたがゴールにたどり着くことはなかった。
ディスクに傷もなく、PSも他のゲームは問題なく動作する。
メモリが壊れたのかなと思い、最初からやり直す事にした。
その後もメモリがいつの間にか消えているという挫折を何度か繰り返し、そのうちフィールド画面で敵とエンカウントしなくなるという事態にもなった。
敵と遭遇しないとユフィが仲間にできない。
そこでDisc2をDisc3に変えるとエンカウントすることを発見し、戦闘の度に本来なら必要のないDisc交換を行っていた。
案の定、そのうちデータは壊れた。
彼女のために闇落ち
最初から始める事を繰り返すうちに、敵から的確に盗みを働き、効果的にアイテムを収集し、仲間が死ぬ前には装備をひん剥き、非情なプレイが目立つようになってきた。
友人の噂話と重箱の隅をつつくプレイ、そして何度も最初からプレイしたお陰で、後に攻略サイトで確認したらほぼ全ての隠し要素をほじくり返していた。盗ってなかったのはティファの下着くらいだった。
なぜ、何度データが壊れてもFF7を再開するのか?
それはエアリスが死なないディスクが存在しているという噂があったからだ。
終わらないスノボ、エンカウントしないフィールドなど、バグなのはわかっている。
それでも自分の壊れたゲーム環境では、エアリスがプレイヤーキャラに残ったままストーリーを進めることができるのではと思ったからだ。
それでもある日、とうとうデータが消滅する事なく最終決戦まで来てしまった。
やっぱりエアリスが生き返ることはなかった。
最後の戦いに望む時に、この10年間を思い出した。
購入した時は学生だったのにオッサンになっている。
最初で最後の最終決戦は、まるでアニメのように、最後のボスをクラウドのリミット技で倒した。
この技を手に入れるためにも何年費やした甲斐があった。
平和になった世界(エンディング)を見て、エアリスの想いが救われたと感じた。
生き返らせてあげたかったけど、「もういいんだよ」と言われた気がした。
レッドXIIIの子供が野を駆け回る。
アイツ結婚したのか…。
ん?
テレビの左斜め上のカレンダーに目をやると2007年3月になっている。
ふと10年間が急激に動き出したような気がした。
もう色々情報をくれた高校の友達とも連絡が付かない…
急に一人だった事を思い出した…。
10年間という取り返しのつかない時間に押しつぶされそうになった時に例のメインテーマが流れてきた。
音楽は恐ろしい。まあでも悪くは無かったと思ってしまった。
みんな幸せになっただろうし(自分以外…)
エンディングも見ずに10年FF7をやるなんて、レアな体験だったと思う。
10年間の別れを告げてPSの電源を切った…。
Fin.