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世界で活躍できるグローバル人材を育成するeスポーツの教育的価値普及を目指して

2020年11月25日(金)、eスポーツを通じて高校生の新しい教育の形を提案する組織NASEF JAPAN(北米教育eスポーツ連盟 日本本部 / 読み:ナセフジャパン)が株式会社サードウェーブにより設立されました。

「NASEF」は、北米の加盟高校と提携し、eスポーツを行うことによる様々な効果や価値を研究し次世代を担う高校生が社会変革をリードできる人材となるために必要な共感力や共創力、想像力、そして問題解決力を培うプラットフォームとして「eスポーツ」を活用した教育の開発・機会の場を提供してきた組織です。

今回日本で立ち上がった「NASEF JAPAN」は、これからの日本の高校生eスポーツにおいてどんな役割を担おうとしているのでしょうか?

発足にあたり、今後の取り組みについてNASEF JAPANのお二人にお話を伺いました!(取材日:2020年11月25日)

北米教育eスポーツ連盟日本本部
坪山 義明 さん、末廣 誠 さん

◇元体育教員から一転!eスポーツへの期待とは

ーー坪山さんは最近まで教師をされていたとか。eスポーツに携わろうと思ったきっかけは何だったんですか?

坪山 義明 さん(以下、坪山)「今年の8月、日本に帰国するまで10年間、アメリカの慶應義塾ニューヨーク学院でスポーツトレーナー兼、寮監を務めていました。

新型コロナウィルスの影響を受け、生徒達が全員日本に帰国したことでオンライン授業を行うにあたり、保健体育を教える身として改めて『スポーツって何だろう』と深く考えるようになりました。

ーーアメリカでお勤めだったんですか!

坪山「そんな時、スポーツ庁の初代長官を務められた鈴木大地長官の『スポーツ(運動)は遊びである』という言葉を目にしたんです。

私はずっとサッカーが専門で、フィジカルスポーツばかり興味を持ってきました。そのためどうしても“勝ちにこだわる”という側面が強かったのですが…。コロナ禍において、先の言葉で『スポーツは楽しむものだ』という原点に立ち戻ったんです。

そんな中、授業を受け持っていた生徒に、『新しいスポーツは何があるか』と尋ねたところ、一人の生徒が『eスポーツ』と答えたんです。」

ーーeスポーツを挙げる生徒がいたことに驚かれたんですね。

坪山「既に生徒にも意識の変化が始まっていると感じました。それならば時代に合わせて教員側もアップデートが必要です。私の今までの経験を生かして、学校や先生方にeスポーツを普及させる一助になれたらと考えました。」

ーー高校生や学校側の事情にもご理解がある方の言葉には説得力が増しますね。

坪山「そう思って頂けると嬉しいですね。NASEF JAPANに加わり、全国高校eスポーツ選手権で採用されている『リーグ・オブ・レジェンド』や『ロケットリーグ』などのPCゲームを知りました。プレイの前後にはホワイトボードを使って作戦会議と反省会、プレイ中はヘッドマイクを駆使して声を掛け合い戦うさまをみて、フィジカルスポーツとまるで一緒だと感じたんです。

性別や体格を問わず参加でき、協力してコミュニケーションを取ることができるeスポーツは、時にリアルスポーツ以上の経験を得られると期待しています。」

◇教育的スポーツとは

ーーNASEF JAPANの今後の取り組みとして、注目されるポイントを教えてください。

末廣 誠 さん(以下、末廣)「NASEF JAPAN」は、「NASEF」の持つ豊富なコンテンツ・経験を日本向けにアレンジして日本の高等学校にeスポーツの教育的価値を普及・啓発し、あらゆる分野において世界で活躍できるグローバル人材を育成する目的で発足しましたが、その中で特に注目すべき点はやはり英語など外国語の部分です。eスポーツは、ゲームに取り組んでいると当たり前のように英語が出てくるんです。例えば、『リーグ・オブ・レジェンド』の場合『”トップレーン”で”ジャングル” から相手が出てきたら敵がいるかもしれないから”タワーハグ”してていい』…といった風に自然とカタカナ英語が出てきます。」

ーーたしかに!当たり前のように覚えたゲーム用語はカタカナということが多いかもしれません。

末廣「それが身についていると、そのうちeスポーツ大会などの英語放送を観ても何を言っているのか大体わかってくるんです。『ああ、今このことを話しているんだろうな』『これについて問題が起こっているんだな』とか、理解できるようになっていく。そこから自然と言語の理解が深まっていくんです。

他にも、対戦ゲームの場合、マッチングする相手が海外の方というケースもあります。共通で使っている用語があるので、コミュニケーションも取りやすいというのもあるかもしれません。最初はかたことでも、自然と話せるようになったという話もよくききます。」

ーーなるほど。今はゲーム中にテキストチャットやボイスチャットを使うことも多いですよね。吸収力の高い中高生のうちから自然とそういったチームコミュニケーションを取ることで言語を習得していくということは十分にありえそうです。

坪山「以前、英語がまだ得意ではない頃、サッカーが盛んなアメリカ西海岸立ち寄った際、現地のチームに自然に溶け込めたという経験があります。ゲームでもスポーツでも音楽でも、興味があることを媒介にして海外の人と繋がるきっかけになります。そこから世界に羽ばたける学生がどんどん増えてくれると良いですよね。」

ーーたしかに…。知っている言葉から意味を紐解くようになるというのは、とてもイメージしやすいです。NASEF JAPANのプレスリリースでは欧米の国々を中心とした高校生同士の交流を掲げられていますね。交流と聞くと交換留学のようなものをイメージしてしまいますが、どんなイメージでしょうか?

末廣「例えば日本とアメリカをオンラインで繋ぎ、好きなゲームのキャラクターをプレゼンしあうとか。ゲーム内の好きな戦略を伝え合う…といったことなども考えています。」

ーー言語が違っても、好きなものを語る時は何でも盛り上がりそうですね!

末廣「生徒同士、とても刺激になると思います。」

◇まずは100校の加盟を目指す

ーーNASEF JAPANの今後の活動について教えてください。

末廣「まずはウェビナー等を使ってNASEF の培ってきた教育コンテンツや研究内容を日本国内の学校に共有していきたいと考えています。2021年の4月頃までには、加盟100校を目指したいですね。」

坪山「北米では、実際高校で授業に取り入れているカリキュラムがあるので、日本の学校にも受け入れてもらえるよう整備して公開していく予定です。eスポーツが高校生にとってどんな教育的価値があるか、説得力のある研究結果がありますので、保護者の方や学校に対してわかりやすくお知らせしていきたいです。」

◇全国高校eスポーツ連盟との住み分け

ーー1年ほど前、「一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF ジェセフ)」が設立された際にNASEFとの提携が発表されていました。末廣さんはJHSEFにも所属をされているとのことですが、今回発足されたNASEF JAPANはどのような位置づけになるんですか?

末廣「JHSEFはeスポーツの教育的価値や社会的意義を広く検証し啓発していくにより、eスポーツが日本の新しい文化として社会に根付くことを目指しています。具体的には“全国高校eスポーツ選手権”の開催や、eスポーツがどのような教育的価値を生むのかを啓発する活動を行ったり、ゲーム依存症などの課題に対する研究調査活動を行います。eスポーツの教育的価値の部分に関しては、eスポーツ先進国のアメリカの事例やコンテンツ・ノウハウなどを積極的に取り入れたいということで1年前にNASEFと提携を行いました。今回NASEF JAPANが立ち上がりましたので、NASEF JAPANはNASEFが持つアメリカのコンテンツを日本の高校向けにカスタマイズして、カリキュラムの提供や教員向けのセミナーを実施していきます。ですので、NASEF JAPANはJHSEFと共にeスポーツの教育的価値を啓発するパートナーとして活動していくということになります。」

ーーなるほど!とても分かりやすいです。

◇「年会費等は頂かない」まずは参加してほしい

ーー2018年以降、eスポーツを授業として取り入れ始めた学校も増えてきました。NASEFの理念へ共感する教育機関や、教育カリキュラムに興味がある学校もどんどん増えてくるのではないでしょうか。加盟に際して年会費などは掛かるんですか?

末廣「NASEF JAPANとしては、まずeスポーツを学校に広く普及して行きたいと考えていますので、加盟にあたり年会費は特に頂いていません。詳しくはHPから気軽に問い合わせをいただきたいと思っています。」

ーーeスポーツを利用した教育への理解が、より多くの学校に広がることを願ってやみません!本日はありがとうございました。


【NASEF JAPAN今後の取り組み】

①国際的な枠組みへの参加
NASEFに加盟する欧米の国々を中心とした高校生との交流により、日本の高校生が“活きた英語コミュニケーション”を体験する場を提供する。

②eスポーツを利用した教育コンテンツの利用促進
NASEF JAPANに加盟する高校に、プログラミング学習コンテンツなど、NASEFの提供コンテンツ・ノウハウを日本語で共有する。また、活動内容や、NASEFが実施している研究に関するウェビナーを随時開催する。

③生徒が活躍する場の提供
国際的な高校生eスポーツ大会への参加促進、NASEF JAPANによる高校生向けリーグ戦の開催

④eスポーツ部の活性化
高校eスポーツ部顧問の教職員に対して、部活動マネージメントのノウハウを提供する。

【NASEF JAPAN加盟校の募集】

NASEF JAPANでは加盟していただける日本の高校を幅広く募集しています。
公式ウェブサイト

【NASEF JAPAN(北米教育eスポーツ連盟 日本本部) 概要】
商号:北米教育eスポーツ連盟 日本本部
(NORTH AMERICA SCHOLASTIC ESPORTS FEDERATION JAPAN「NASEF JAPAN」)
所在地:〒101-0021 東京都千代田区外神田2-14-10 第2電波ビル 9F
URL:https://nasef.jp

【NASEF(北米教育eスポーツ連盟) 概要】
商号:NORTH AMERICA SCHOLASTIC ESPORTS FEDERATION「NASEF」
本部:アメリカ・カリフォルニア州
URL:https://www.nasef.org

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